海外移住の年齢別ガイド|20代・30代・40代・50代で変わる戦略

移住準備

海外移住の年齢別ガイド|20代・30代・40代・50代で変わる戦略

もう若くないし、今から海外移住は遅いかもしれない。年齢を理由に、そう感じて一歩目を止めている方は多いと思います。「何歳までなら間に合うのか」「40代、50代からでも海外で暮らせるのか」という相談は、私のところにも本当によく届きます。

私自身は、20代で初めてロンドンに行き、30代は会社員としてスイスに赴任し、40代はイギリスで起業しました。スイスとイギリスを合わせて、海外在住は通算10年になります。年代ごとに、海外で暮らす形をまったく違うものに変えてきました。

その経験から最初にお伝えしたいのは、年齢で閉じるのは雇用の道であって、海外移住そのものではないということです。この記事では、海外移住と年齢の関係を、年齢で閉じる道と閉じない道に分けて整理し、20代から60代以降まで、年代ごとに変わる戦略をお伝えします。

※本記事は筆者個人の経験と、これまでサポートしてきた方々の事例にもとづいています。本記事のビザ・永住権の年齢要件や金額条件などの情報は2026年9月時点のものです。各国の制度は頻繁に変更されます。渡航・申請の前に、必ず各国移民局・大使館の公式サイトやビザの専門家に最新情報をご確認ください。

1. 海外移住に年齢制限はあるのか:年齢で閉じる道と閉じない道

ヨーロッパの駅のホームを歩く人たちの後ろ姿

海外移住に年齢制限があるかどうかは、どの手段で海外に住むかによってまったく変わります。海外移住そのものに一律の年齢制限があるわけではなく、年齢の条件がついているのは、それぞれのビザや働き方のほうです。手段を年齢要件で分けると、大きく3つに整理できます。

1つ目は、年齢の上限で閉じる道です。代表がワーキングホリデーで、多くの国で30歳までと上限が決まっています。海外就職や現地採用も、ビザの種類によっては年齢が条件に関わるものがあります。それ以上に、実際には採用する側で年齢の線が引かれやすく、年齢が上がるほど選択肢が狭まっていきます。

2つ目は、年齢の上限がない道です。個人事業主ビザや起業ビザなど、自分の事業で在留する方法がこれにあたります。オランダの日蘭条約にもとづく個人事業主のルートや、ポルトガルのD7ビザなど、年齢の上限が設けられていない制度が多いのが特徴です。

3つ目は、年齢の下限で開く道です。リタイアメント系のビザがこれにあたり、たとえばタイのロングステイビザ(O-A)は50歳以上が対象です。

ルート 年齢要件 在留の主導権は誰にあるか
ワーキングホリデー 多くの国で30歳まで 制度の期限で終わる
海外就職・現地採用・海外赴任 ビザによっては年齢が関わり、採用側でも線が引かれやすい 雇う会社
個人事業主ビザ・起業ビザ 上限が設けられていない制度が多い 自分の事業
リタイアメント系ビザ 50歳以上など下限がある 年金と資産の条件

私の場合、スイスとイギリスには会社員の赴任で住みましたが、赴任ビザは永住権にはつながっていませんでした。ワーホリも留学も赴任も、その状態が終われば日本に帰らなければなりません。雇用で海外に出たことは私のキャリアの大切な土台ですが、そこで気づいたのは、年齢の壁に当たるのは、他人に在留を決めてもらう道だけだということでした。自分の事業で在留する道は、年齢で閉じない。この記事の年代別の話は、すべてこの区分をもとにしています。

2. 海外移住は何歳までに動くべきか:永住権から年齢を逆算する

懐中時計を手にした手元

海外移住は何歳までに動くべきか。この問いへの私の答えは、年齢の数字ではありません。何歳までに動くかは、永住権から逆算して決めるものだと考えています。

長く住み続けるなら、ゴールは永住権です。永住権は国ごとに必要な居住年数が決まっていて、オランダやポルトガルなどは5年が目安になります。そこで、次のように足し算をしてみてください。

POINT|海外移住の年齢を逆算する式

今の年齢+事業の準備期間(目安1〜3年)+永住権までの居住年数(オランダ・ポルトガル等は5年が目安)=永住権の申請が見えてくる年齢

たとえば45歳から事業の準備を始めて48歳で渡航すれば、50代前半で永住権の申請が見えてきます。こう考えると、大事なのは何歳かより、いつ準備を始めて、どの国の永住権をゴールにするかだと分かります。逆に、ゴールの国が決まっていないと、何年住んでも永住権の年数が積み上がらないことがあります。ビザの種類によっては、住んだ期間が永住権の居住年数に数えられないからです。国ごとの条件は永住権の取得条件を国別に比較や永住権が取りやすい国ランキングで詳しくまとめています。

私の場合、この逆算をせずに回り道をしました。イギリスには赴任で移りましたが、赴任ビザで暮らした期間は永住権の年数に数えられませんでした。そこで眼鏡屋を起業し、移民を雇う権利であるスポンサーシップライセンスを取得して、自分の事業で自分を雇う形に切り替えました。スイス赴任のあとイギリスに移ってから、永住権を取得できるまでに8年かかりました。なお、イギリスでは就労ビザなどから永住権を申請できるまでの年数は原則5年ですが、これを原則10年に延ばす見直し案が2025年11月にイギリス政府から示されています。2026年9月時点ではまだ施行されていないため、最新の状況はイギリス政府の公式サイトでご確認ください。

もし最初からゴールを決めていれば、もっと早く、もっと迷わずに進めたはずです。だからこそ、年齢を気にする前に、まずゴールの国を決めてほしいと思っています。

3. 20代の海外移住:ワーホリは入口、30歳までに稼ぐ力の土台を

ロンドンの通りに立つ赤い電話ボックス

20代の海外移住は、選べる手段がいちばん多い年代です。ワーキングホリデーや留学など、若い世代向けの制度を使って、まず海外に住んでみることができます。

私の原点も20代にあります。20代で初めてロンドンに行きました。憧れてどきどきしながら渡ったあの感覚は、今も変わっていません。ただ、当時の私が欲しかったのは、いい会社、昇進、給料といった、世間で良いとされているものでした。海外で暮らすことと、自分で稼ぐことが結びついたのは、ずっと後のことです。

ワーキングホリデーは、多くの国で申請時の年齢が18歳以上30歳以下と決められています。国ごとの年齢制限はワーキングホリデーの年齢制限とはで一覧にしています。たとえばイギリスのワーホリにあたるYouth Mobility Schemeは、日本国籍の場合18歳から30歳が対象で、£2,530(2026年9月26日時点のレートで約53万円)の貯蓄を示す必要があります。また、18歳未満の子どもと同居している、または扶養している場合は申請できないという条件もあります。

ワーホリは、海外での初めての暮らしを体験する入口としては、とても使える制度です。ただ、30歳で終わるので、長期の移住には向いていません。ワーホリが終わったあとに日本でのキャリアも中途半端になってしまう前に、早めに自分で稼ぐ力をつけておくことが大切だと、私は考えています。20代のうちに身につけた稼ぐ力は、30代以降の選択肢をそのまま広げてくれます。

実際に、ワーホリのあとで道を切り替えた方がいます。受講生の諸橋さんは、ワーホリでパリに渡り、ビザの期限が来て一度日本に帰国しました。そこから日本で事業を立ち上げ、その事業を持ってパリに戻り、今はオランダで暮らしています。ワーホリで終わらせず、稼ぐ力を先につけてから海外に戻るという順番です。ワーホリのあとにどう道を切り替えるかは、ワーホリ挫折からの逆転のロードマップで詳しく紹介しています。

20代は、時間という最大の資産を持っている年代です。制度を入口として使いながら、その先の永住権と事業まで見据えておくと、20代の海外経験はそのまま一生の土台になります。

4. 30代の海外移住:キャリアの中の挑戦と、子どもの年齢

山に囲まれたスイスの村の通り

30代の海外移住は、それまで積んできたキャリアを使える年代です。私の30代のスイス赴任も、会社のキャリアの中での挑戦でした。

20代や30代のうちは、赴任で国を移りながら働く形も成り立ちます。ただ、子どもが大きくなってくると、会社の都合で国を移る働き方には限界が来ます。30代で海外移住を考えるなら、自分のキャリアだけでなく、家族の数年後まで見ておく必要があります。30代は仕事でも家庭でも責任が増えていく時期ですが、そのぶん、今の会社で積んでいる経験を将来の自分の事業にどうつなげるかを考え始めるには、ちょうどいいタイミングでもあります。

そこで大切になるのが、子どもの年齢です。子どもは年齢が上がるほど、新しい国の言葉や学校に順応するのが大変になっていきます。1歳や3歳くらいまでは比較的スムーズですが、中学生や高校生になると、本人の負担はかなり大きくなります。中途半端な時期に動くと、子どもにとってはストレスの大きい移住になりかねません。

だからこそ、教育移住を考えるなら、親の年代より、子どもの年齢から移住の時期を決めるという視点が必要です。子どもがいる30代は、自分が何歳かよりも、子どもが何歳のときに動くかを先に考えてみてください。国選びと教育の考え方は教育移住とは?後悔しないための国選び、言葉の育ち方はバイリンガル子育てとはでまとめています。

30代の移住ルート全体については、30代の海外移住|キャリアを活かして移住を実現する現実的な方法で詳しく解説しています。

5. 40代の海外移住:経験が事業の核になる年齢

ロンドンの街角に並ぶ小さな店の店先

40代の海外移住は、経験がそのまま事業の中身になる年代です。

私の場合、40歳前後でキャリアの構造に気づきました。私が築いてきたキャリアは海外赴任を前提にしていたので、ポジションが上がるほど国を移ることになり、ロンドンに住み続けることはできません。赴任のままでは、イギリスの永住権にはつながらない。イギリスに住み続けるための選択肢は、起業でした。会社で働いている限り自分で国を選べないという構造に気づき、自分で稼ぐ道を選んだのです。

40代を迎えてから今に至るまで、私はずっとイギリスで暮らしています。人生で一番時間が濃いのは、この40代だと感じています。30代のスイス赴任がキャリアの中での挑戦だったとすれば、40代はキャリアの外に出た挑戦でした。その意味は大きかったと感じています。

40代は、20年近く積み重ねてきた仕事の経験を持っています。業界の知識、人とのつながり、お客さんがどんなことに悩んでいるかを知っていること。これは若い世代にはない強みで、そのまま事業の核になります。一方で、家族の事情もあり、身軽には動けない年代でもあります。だからこそ、先に日本で事業を育ててから渡航するという順番が合っています。

実例として、スイスに25年住むりえさんがいます。りえさんは40代でキャリアを失い、そこから起業して、今は自分の事業で暮らしています。その歩みはスイス移住25年のリアルで紹介しています。40代の移住の進め方は40代からの海外移住|遅くない理由と成功する人の共通点もあわせてご覧ください。

6. 50代の海外移住:採用の年齢制限の外で、事業から道を開く

テムズ川にかかるロンドンのタワーブリッジ

50代の海外移住を考えるとき、まず知っておきたい事実があります。会社員は50代を超えると、採用されにくくなります。キャリアの積み方によっては、面接に呼ばれないこともあります。これは本人の能力の問題ではなく、雇用という仕組みの中で年齢の線が引かれやすいという構造の話です。雇用の世界では、年齢を重ねるほど選ばれる側の条件が厳しくなります。一方で事業の世界では、長く積み上げた経験や信頼が、そのままお客さんに選ばれる理由になります。

ただ、ここまでお伝えしてきたとおり、年齢で閉じるのは雇用の道です。自分の事業で在留する道には、年齢の上限が設けられていない制度が多くあります。50代は、採用の年齢制限の外に出て、事業から道を開ける年代です。

その実例が、岩手で歯科医院を経営してきた松浦さんです。松浦さんはかつてロンドンに留学した経験があり、それ以来20年間、イギリスで暮らす夢を温め続けてきました。子育てと親の介護を経て、50代でロンドンへの移住を決めます。選んだのは、雇ってもらうのではなく、自分で雇う側に回るスポンサーシップライセンスというルートでした。申請から許可までは7ヶ月かかり、途中では2時間にわたる英語のインタビューもありました。そうした道のりを一つずつ乗り越えて、ロンドンで歯科を開業しています。夢は何歳からでも実現できる。松浦さんの歩みは、そのことをまっすぐに示してくれています。詳しくは50代でロンドン歯科開業|スポンサーシップライセンス取得までの道のりで紹介しています。

50代は、子育てが一段落し、夫婦で住む国を選び直せる年代でもあります。私自身も、50代でポルトガルの永住権を目指す予定です。イギリスの永住権を維持しながら、ポルトガルで5年を過ごしてEUの長期居住の権利を取れれば、ヨーロッパのほかの国にも滞在しやすくなります。50代は終わりではなく、次の暮らしを設計し直すタイミングだと考えています。

なお、50代以降の移住では、リタイアメント系のビザも選択肢になります。たとえばタイのロングステイビザ(O-A)は50歳以上が対象で、80万バーツ(2026年9月26日時点のレートで約377万円)以上の預金などが条件です。ただ、年金と資産で暮らすことを前提にした制度なので、就労はできません。長期滞在ビザの種類はロングステイできる国一覧、老後の移住全体は老後の海外移住|費用・ビザ・医療…現実と向き合う完全ガイドで整理しています。

7. 60代からの海外移住は遅いのか:年齢より積み上げた時間

茶釜と茶碗が並ぶ茶室のしつらえ

「60歳では無理ですか」と聞かれたことがあります。私の答えは、無理ではない、でした。前の章でご紹介した松浦さんも、50歳を超えてからロンドンに移っています。海外移住そのものに、60歳だから無理という線はありません。ただ60代からの移住では、医療や住まいの条件を、若い世代以上に丁寧に確かめておく必要があります。

一方で、稼ぐ力を身につけることについては、正直にお伝えしておきたいことがあります。65歳や70歳から始めることも、できなくはありません。ただ、40歳から少しずつスキルを積み上げてきた人とは、より上流の仕事へ上がっていく速さが違います。上流の仕事ほど、一日で身につくものではないからです。年齢そのものより、それまでに積み上げた時間の差が出てくる。だからこそ、始めるのは早いほうがいいと私は考えています。

もう一つ、考えておきたいことがあります。60歳で定年を迎えたあと、90歳まで生きるとすれば、およそ30年あります。その30年を、年金と資産だけで暮らす前提は、もう現実的ではないと私は感じています。だからこそ、何歳であっても、自分で誰かに価値を届けられる仕事を持っておく意味があります。

私の母は、68歳で自宅に作法教室を開きました。70代になってからは、私の真似をしてInstagramを始めたところ、お客さんが来てくれたと話していました。誰かに貢献できることが本当に幸せだと、母はいつも言います。年齢を重ねても、新しく始めることはできる。私は母の姿から、そう学んでいます。60代以降の暮らし方と年金については、老後の海外移住や海外移住したら国民年金はどうなる?も参考にしてください。

8. 年齢別の海外移住で共通する準備:年齢より先に決める3つのこと

床に置かれた古い旅行かばん

ここまで年代ごとにお伝えしてきましたが、どの年代でも、年齢より先に決めておきたいことは同じです。

① 永住権のゴールとなる国:税金の安さではなく、住んでいるだけで心が満たされる国を選ぶ。国の候補は移住しやすい国ランキング|ヨーロッパ在住10年の私が選ぶ4カ国も参考にしてください。

② その国で在留を支える自分の事業:ビザの条件を満たし続けるための、自分で稼ぐ力。

③ 渡航までの資金計画:準備期間と移住後の生活を支えるお金。目安は海外移住の資金はいくら必要?でまとめています。

年代別に詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。

年代 この記事で扱ったこと 詳しい記事
20代 ワーホリは入口、早めに稼ぐ力を ワーキングホリデーの年齢制限とは/ワーホリ挫折からの逆転のロードマップ
30代 キャリアの中の挑戦と子どもの年齢 30代の海外移住
40代 経験が事業の核になる 40代からの海外移住/スイス移住25年のリアル
50代 採用の外で、事業から道を開く 50代でロンドン歯科開業
60代以降 年齢より積み上げた時間 老後の海外移住

そして、どの年代にも添えておきたいことがあります。短期間で一気に稼ぐ道を狙う必要はありません。地道に事業を積み上げた人ほど、その国に長く住み続けられる。これは、これまで多くの方の移住を見てきて、私が一番強く感じていることです。

ここまで、海外移住と年齢の関係を年代別にお伝えしてきました。20代はワーホリを入口にして早めに稼ぐ力を、30代は子どもの年齢を先に考え、40代は積み重ねた経験を事業の核にする。そして50代以降は、雇用の年齢制限の外で、事業から道を開くことができます。

振り返ると、私にとって人生で一番時間が濃いのは、今も続いているこの40代です。20歳でロンドンに憧れたときと、今の自分の気持ちは何も変わっていません。人生の幸せは、年齢やタイミングで決まるものじゃない。私は心からそう思っています。

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