「日本のパスポートは世界最強」。そんな話を耳にしたことがある方は多いと思います。ビザなしで渡航できる国の数が世界トップクラスであることは、なんとなく知られています。
しかし、強いパスポートを持っているから海外移住もしやすいかというと、話はそう単純ではありません。私自身、イギリスで事業を営みながら海外移住を実践してきましたが、パスポートの強さと「住み続けられるかどうか」は、まったく別の話だと日々実感しています。この記事では、パスポートランキングの仕組みと2026年最新の結果を整理したうえで、その強さを海外移住の準備にどう活かせるか、そしてパスポートの強さだけでは越えられない壁について解説します。
目次
1. パスポートランキングとは?Henley Passport Indexの仕組み

パスポートランキングと聞いてまず思い浮かぶのが、Henley Passport Indexという指標です。まずはこの仕組みを整理しておきます。
ランキングの基盤はIATAのTimaticデータ
Henley Passport Indexは、Henley & Partners社が算出している世界的に最も引用されるパスポートランキングです。この指標の基盤になっているのが、IATA(国際航空運送協会)が運営するTimaticというデータベースです。
Timaticは、世界中の航空会社が搭乗前にビザ要件を確認するために使う実務データベースです。つまりこのランキングは、アンケートや推計から作られたものではなく、実際の渡航現場で使われているデータをそのまま集計したものだということです。この点が、他の類似指標と比べたときのHenley Passport Indexの信頼性の高さにつながっています。
対象は199の国と地域のパスポート。それぞれについて、ビザなし、またはアライバルビザ(到着時ビザ)で入国できる国・地域の数をスコア化しています。年に1回、1月に本体のランキングが発表され、四半期ごとにも途中経過が更新されます。
何を測っているのか(ビザなし渡航先の数)
このランキングが測っているのは、あくまで「そのパスポートを持っていれば、事前のビザ取得なしで何か国に入国できるか」という渡航の自由度です。スコアが高いほど、短期渡航のハードルが低いということになります。
ここで一つ、注意しておきたいことがあります。ビザなしで「入国できる」ことと、その国に「住める」ことはまったく別の話だという点です。この違いは、後半の章で詳しく解説します。パスポートランキングの数字だけを見て「移住も簡単そうだ」と早合点してしまうと、実際の準備段階でつまずくことになりかねません。
2. 2026年最新版パスポートランキング|日本は何位か

パスポートランキングの仕組みがわかったところで、2026年最新版の結果を見ていきます。
TOP10と日本の順位
2026年版のHenley Passport Indexでは、1位はシンガポール(192か国)でした。2位には日本・韓国・UAE(アラブ首長国連邦)が並び、188か国にビザなしで渡航できます。
日本はかつて単独で世界1位だった時期もありますが、2026年版では2位グループという結果です。ただし1位と2位グループの差はわずか数か国分にすぎず、日本のパスポートが世界最高水準の渡航自由度を持っていることに変わりはありません。
参考までに、主要国のスコアを表にまとめます。
| 順位 | 国・地域 | ビザなし渡航可能数 |
|---|---|---|
| 1位 | シンガポール | 192か国 |
| 2位 | 日本・韓国・UAE | 188か国 |
| 3位 | スウェーデン | 187か国 |
| 4位 | ドイツ・フランス・オランダ等(ヨーロッパ主要国) | 185か国 |
| 6位 | イギリス | 184か国前後 |
| 10位 | アメリカ | 180か国 |
| 最下位 | アフガニスタン | 24か国 |
※順位・スコアはHenley Passport Index 2026年版(Henley & Partners公式)に基づきます。四半期ごとに更新されるため、最新の数値は公式サイトでご確認ください。
ヨーロッパの主要国(ドイツ、フランス、オランダなど)と比べても、日本は同等以上の渡航自由度を持っていることがわかります。一方で、最下位のアフガニスタン(24か国)と1位のシンガポール(192か国)の差は168か国分にもなり、パスポートによる渡航の自由度には大きな格差があることも見えてきます。
順位の推移と近年の変動要因
日本は2018年に初めて単独で世界1位を獲得し、その後はシンガポールと首位を争ってきました。近年の変動要因としては、各国間のビザ免除協定の締結や解消、そして紛争や制裁といった地政学的な情勢変化が挙げられます。
わかりやすい例がUAEです。UAEは外交政策としてビザ免除協定を積極的に締結してきた結果、大きく順位を上げ、2026年版では日本・韓国と並ぶ2位グループに入りました。パスポートランキングは固定されたものではなく、各国の外交政策次第で変わりうるものだという認識を持っておくとよいと思います。
3. パスポートランキング上位の日本|「強い」の実務的な意味

パスポートランキングの数字だけを見ても、実感が湧きにくいかもしれません。日本のパスポートが強いというのは、実務的にはどういう意味を持つのかを見ていきます。
188か国にビザなしで入れるという実務的な意味
日本のパスポートで188か国にビザなしで渡航できるということは、実務的に何が可能になるのでしょうか。ヨーロッパのシェンゲン圏(26か国)、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、東南アジアの主要国、中南米の多くの国に、事前のビザ取得なしで渡航できます。
つまり、気になる国があれば、思い立ってすぐに行ってみることのハードルが極めて低いということです。これは一見地味に聞こえるかもしれませんが、海外移住を考える人にとっては非常に強力な武器になります。この点は、次の章で詳しく掘り下げます。パスポートランキングの強さは「旅行が便利」というだけで終わる話ではなく、移住先を自分の目で見に行けるという選択肢の幅に直結しているのです。
他国と比較したときの日本の優位性
他国と比較すると、日本の優位性はより明確になります。たとえば中国のパスポートは、この10年で大きく順位を上げてきたとはいえ、ビザなし渡航先の数は日本より大きく少ないのが現状です(Henley & Partners公式)。インドも同様に、ヨーロッパを下見したいと思っても、多くの国で事前のビザ取得が必要になります。
つまり日本のパスポートを持っている人は、世界の多くの人が簡単には手にできない「移住先を自由に下見できる権利」を、生まれながらにして持っているということです。この事実を意識している人は、実はそれほど多くありません。恵まれた立場にいるのに、それを十分に使えていない人が多いというのが率直な印象です。
4. パスポートランキングの強さを海外移住の準備にどう活かすか

ここからが、この記事で一番お伝えしたい実務的な話です。パスポートランキングの結果を紹介するだけの情報はたくさんありますが、その強さを海外移住の準備にどう使うかという視点はあまり語られていません。
下見・視察・不動産内見・現地銀行の情報収集としての活用
海外移住を検討する段階で、まずやるべきことは何でしょうか。私は、候補国に実際に足を運んで、自分の目で確かめることだと考えています。街の空気感、物価の感覚、住環境、現地の人の雰囲気。こうした情報は、ネット上でいくらリサーチしても掴みきれません。
日本のパスポートがあれば、ヨーロッパでもイギリスでもカナダでも、事前のビザなしでこうした下見渡航ができます。気になるエリアの不動産を内見する、現地の銀行に条件を確認しに行く(口座開設自体は居住ビザが必要な国が多いですが、条件確認は可能です)、コワーキングスペースを見に行ってビジネス環境の肌感覚を掴む。こうした渡航が、事前手続きなしにできるというのは、地味に見えて実は大きなアドバンテージです。
ビザ申請前のリサーチ渡航という使い方
多くの個人事業主向けビザ(オランダのZZPビザ、ポルトガルのD7/D2ビザなど)は、申請時に事業計画書や住居の証明を求められます。つまり、ビザを取る前に現地をよく知っておくことが、申請の質を上げることにつながります。
ノービザで入国し、現地の行政窓口や移民弁護士との面談を済ませ、帰国後にビザ申請書類を準備する。こうした段取りが可能なのは、日本のパスポートの強さがあってこそです。デジタルノマドビザのように、比較的取得のハードルが低い制度を検討している方は、デジタルノマドビザに関する記事もあわせて参考にしてください。最初から永住権まで見据えて逆算し、下見の段階からルートを設計しておくことが、後々の申請をスムーズにします。
「住む国を自分の目で選ぶ」ためのパスポート活用
税率や物価の比較表だけでは、その国が自分の心に合うかどうかまではわかりません。実際にその街を歩き、空気を吸い、食事をしてみて初めてわかることがあります。日本のパスポートは、その体験を世界188か国で、事前の手続きなしに可能にしてくれます。
ただし、ここで一つ注意が必要です。行けるからといって、そのまま住めるわけではありません。この点については、次の章で詳しく見ていきます。
5. パスポートランキング上位でも越えられないビザなし滞在の壁

パスポートランキングで上位にある日本のパスポートを移住準備に活かせる一方で、ビザなし滞在には明確な期限があります。ここは正確に理解しておく必要がある部分です。
シェンゲン90/180日ルールとは
シェンゲン圏(EU主要国を含む26か国)では、ビザなし滞在は「あらゆる180日間のうち合計90日まで」という上限が定められています。つまり90日滞在したら、その後90日間はシェンゲン圏の外に出なければなりません。「3か月住んでみて気に入ったから、そのまま延長」ということは制度上できないのです。
このルールを知らずに渡航し、結果的にオーバーステイになってしまうケースは実際にあります。またシェンゲン圏内での滞在日数は加盟国すべてで合算される点にも注意が必要です。フランスで30日、オランダで30日、ドイツで30日滞在すれば、合計で90日となり上限に到達します。
※シェンゲン圏の滞在ルールの詳細は、欧州委員会シェンゲン圏公式サイトでご確認ください。
主要国のノービザ滞在日数と注意点
シェンゲン圏以外の主要国についても、ノービザ滞在の上限を整理しておきます。
イギリス:6か月まで(ただし就労は不可)
アメリカ:ESTA利用で90日まで
カナダ:eTA利用で6か月まで
オーストラリア:ETA利用で3か月まで
ニュージーランド:NZeTA利用で3か月まで
いずれの国も、ノービザ滞在は旅行や短期の商用が前提であり、就労や長期居住は想定されていません。ノービザ滞在はあくまで「入口」にすぎず、それだけで生活基盤を築くことはできないということです。
※各国の最新のビザ要件は、外務省 海外安全ホームページや各国政府公式サイト(例:GOV.UK)で必ずご確認ください。
観光ビザから長期滞在ビザへの接続
多くの国では、観光ビザ(ノービザ入国)からそのまま長期ビザへ切り替えることはできません。一度帰国してビザを申請し、取得後に再入国するという手順が一般的です。ただしオランダのように、ノービザで入国したあとに現地でビザ申請手続きを開始できる、比較的例外的な仕組みを持つ国もあります。
いずれにしても、「パスポートランキングが上位=ビザなしで入れる=長く住める」というわけではないということは、はっきり認識しておく必要があります。この壁を越えるために本当に必要なものは何か。次の章で解説します。
6. パスポートランキングの強さだけでは海外移住は実現しない

ここが、この記事で一番お伝えしたい核心の部分です。
入国はできても「住み続ける」には別の力が要る
ここまで見てきたとおり、日本のパスポートはパスポートランキングで世界2位、188か国への「入口」を開いてくれます。下見にも行ける、リサーチ渡航もできる。これは間違いなく大きな武器です。
しかし「住み続ける」ためには、長期滞在ビザが必要です。そしてビザを取るには、多くの国で「その国でどう生計を立てるのか」を示す必要があります。駐在や現地就職という道もありますが、それは移住先を会社の都合に委ねることになります。海外に行けるかどうか、どこの国に行けるかが会社次第になってしまう、という構造的な制約が生まれてしまうのです。
稼ぐ力と事業設計が移住を実現させる
海外移住の第一歩は、パスポートでも英語力でもありません。私はいつも、場所に縛られずに稼ぐ力を作ることが本丸だとお伝えしています。
パスポートは入口を開ける鍵です。ですがその先で「住み続ける」ためには、自分で事業を設計し、場所に縛られない稼ぐ力を持つことが必要になります。オランダやポルトガルの個人事業主ビザは、まさに「自分で稼ぐ力がある人」に対して、長期滞在と永住権への道を開く制度です。日本の強いパスポートで下見をし、個人事業主ビザで長期滞在を実現し、そこから永住権まで設計する。この一連の流れこそが、パスポートランキングの強さを本当に活かすということだと私は考えています。
ただし、これは短期間で一気に事業を伸ばす話ではありません。地道に積み上げていくことで、住む国を自分で選ぶ自由が手に入る、ということです。急いで結果を求めすぎると、かえって足元が崩れてしまいます。ゆっくりでも着実に事業を積み上げていくことが、結局は一番の近道になります。
7. パスポートランキングについてよくある質問(Q&A)

パスポートランキングについて、よくいただく質問をまとめました。
まとめ|パスポートランキングの強さを本当に活かすために
ここまでの内容を、3つのポイントに整理します。
① 日本のパスポートはパスポートランキングで世界2位、188か国にビザなしで渡航できます。この強さは「移住先を自分の目で選べる自由」に直結しています。
② ただし、ビザなし滞在には期限があります。シェンゲン圏の90/180日ルールなど、「住み続ける」には長期滞在ビザが必要です。
③ パスポートランキングの強さを本当に活かすには、場所に縛られない稼ぐ力と事業設計が土台になります。
パスポートは入口の鍵です。その先の扉を開けるのは、自分自身の力です。2026年現在、日本のパスポートは世界最高水準の強さを持っています。その恵まれた立場をどう使うかは、自分次第です。まずは気になる国に足を運んでみることから始めてみてください。
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