「海外に移住するなら、いずれは永住権も取りたい」。海外移住を検討し始めると、多くの人がこのテーマにぶつかります。ただし、永住権の取りやすさは国によって大きく異なり、必要な年数も条件もまったく違います。
この記事では、日本人が実際に狙える現実的なルートを軸に、永住権が取りやすいとされる国をランキング形式で比較します。大切なのは、永住権そのものをゴールにしないことです。あくまで海外での事業基盤や働き方を固めた先にある選択肢として、位置づけて読み進めてください。
目次
※本記事で紹介する在留年数・語学要件・金額は執筆時点の情報です。ビザ・永住権制度は各国の政策により変更されることが多いため、申請前に必ず各国の移民当局が公開する最新の公式情報をご確認ください。
永住権とは?取得するメリットと「取りやすさ」の考え方

永住権とは、その国に無期限に滞在し、就労や生活を続けられる資格のことです。国籍を取得する「帰化」とは違い、日本国籍を保持したまま現地での生活基盤を持てる点が大きな違いです(詳しくは永住権とは何かを解説した記事もあわせてご覧ください)。
永住権を取得する主なメリットは、次の3つです。
① ビザの更新手続きが不要になること。② 就労制限がなくなり、職種や働き方を自由に選べること。③ 医療や年金など、現地の社会保障にアクセスしやすくなること。
ただし「取りやすい」という言葉は、決して「簡単に取れる」という意味ではありません。この記事における「取りやすさ」とは、次の4つの軸で評価した相対的な現実性を指します。必要な合法滞在年数が短いか、投資や収入のハードルが妥当か、語学要件が過度に高くないか、そして何より日本人が実際に使えるビザから永住権につながるルートが明確に存在するかです。
実際には、永住権制度そのものが存在していても、日本人が使える入り口のビザがなければ、その国は現実的な選択肢になりません。逆に、入り口のビザが比較的取りやすくても、永住権につながる年数や要件が不透明であれば、長期的な計画は立てにくくなります。この記事では、こうした入り口から出口までの一連のルートを意識して各国を評価しています。
ランキングの評価基準

今回のランキングは、以下の4つの基準をもとに総合的に評価しています。
必要年数:何年の合法滞在を経れば永住権を申請できるか。国によって1年程度から5年まで幅があります。
投資・収入要件:申請にあたって求められる資産額や収入水準のハードルです。
語学要件:現地語のテストが必要か、必要な場合はどのレベルが求められるか。
ルートの明確さ:日本人が実際に取得できる就労ビザやフリーランスビザから、永住権へつながる道筋があるかどうか。この項目がもっとも重要です。どれだけ制度上「取りやすい」とされていても、日本人が入り口のビザすら取れなければ意味がありません。
なお、この4つの基準は互いに独立しているわけではありません。たとえば投資や収入の要件が緩やかでも、語学要件が極端に高ければ実質的なハードルは上がりますし、必要年数が短くても審査基準が不透明であれば、計画の見通しは立てづらくなります。ランキングでは、これらのバランスを踏まえたうえで総合的な順位をつけています。
永住権が取りやすい国ランキング8選

1位. オランダ
オランダは、日本人にとってもっとも現実的なルートの一つとされる国です。理由は、日蘭通商航海条約にもとづく起業ビザ(DAFT)という、日本人だけが使える特別な制度が存在するためです。
このビザで事業を継続しながら合法的に5年間滞在すると、永住権を申請できます。語学要件は市民統合試験(オランダ語A2レベル)への合格が必要ですが、他国の中級レベルの要件と比べると取り組みやすい水準です。
DAFTビザは事業活動を続けていることが前提となるため、更新のたびに事業実態を示す必要があります。裏を返せば、事業を継続できている限りは在留の見通しが立てやすく、計画性を持って永住権取得まで進められる数少ない選択肢だといえます。
こんな人におすすめ
起業をベースに、事業の成長と永住権取得を同じ時間軸で設計したい人。オランダ移住の詳しいガイドはこちら
2位. カナダ
カナダはExpress Entry(エクスプレスエントリー)というポイント制の仕組みが整っており、透明性の高さが特徴です。年齢・学歴・職歴・語学力をポイント化し、スコアが基準を超えると招待が届く仕組みで、条件次第では最短1年程度でPR(永住権)取得まで進むケースもあります。
語学要件はIELTSが必須で、全セクションでCLB7以上(おおよそバンドスコア6.0以上)を求められるのが一般的です。試験スコアの有効期限は2年間のため、申請のタイミングに合わせて計画的に取得しておく必要があります。
こんな人におすすめ
一定の英語力を持ち、専門職としてのキャリアを活かせる人。カナダ移住の詳しいガイドはこちら
3位. オーストラリア
オーストラリアは技能ビザ(Skill in Demand等)で就労し、同一雇用主のもとで一定期間を経ると、雇用主指名ビザ(ENS)を通じて永住権を申請できるルートがあります。目安として4年程度の就労実績が求められるケースが一般的です。
カナダと同様にポイント制の要素があり、年齢・職業・語学力が評価対象になります。語学要件はIELTSが必須です。技能ビザ自体は雇用主のスポンサーが前提となるため、渡航前に現地企業からのオファーを得ておく必要がある点は、他国のフリーランス系ビザとの大きな違いです。
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雇用先を確保したうえで、腰を据えて長期的にキャリアを積みたい人。オーストラリア移住の詳しいガイドはこちら
4位. ポルトガル
ポルトガルの不動産投資によるゴールデンビザは2023年に廃止されましたが、安定した収入を証明するD7ビザや、デジタルノマドビザを経由するルートは今も健在です。5年間の合法滞在を経ると、永住権または国籍取得の資格が得られます。
語学要件はポルトガル語A2レベルと、他国と比べて比較的低めに設定されている点が特徴です。D7ビザは年金・配当・利子などの受動的収入を証明する必要があるため、事業からの収入をどう安定的に証明するかが申請時のポイントになります。
こんな人におすすめ
不動産投資に頼らず、収入証明ベースで移住ルートを組み立てたい人。ポルトガル移住の詳しいガイドはこちら
5位. ニュージーランド
ニュージーランドはスキルドミグラントカテゴリーというポイント制の仕組みがあり、職業登録・学歴・収入・就労経験を組み合わせて基準ポイントに達すれば、永住権へ直行できるルートがあります。政府が指定する職業リストに該当する職種であれば、より有利に進められます。
この制度は改定が頻繁に行われており、必要な国内就労経験の年数や評価の仕組みが定期的に見直されています。他国以上に、申請時点の最新情報を確認する重要性が高い国といえます。
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専門職としての学歴・資格・実務経験を活かしたい人。ニュージーランド移住の詳しいガイドはこちら
6位. ドイツ
ドイツにはフリーランスビザという、個人事業主として滞在できる制度があります。このビザで年金保険に加入しながら合法的に5年間滞在すると、永住権を申請できるルートが明確に存在します。
語学要件はドイツ語B1レベル(中級)が求められ、他国と比べるとやや高めのハードルです。フリーランスビザの更新には毎年の事業収支の提示も必要になるため、語学と並行して現地での確定申告体制を整えておくことが実務上のポイントになります。
こんな人におすすめ
個人事業主として、ヨーロッパの中心部に事業拠点を置きたい人。
7位. マレーシア(MM2H)
マレーシアのMM2Hは、正確には永住権ではなく10年更新可能な長期滞在ビザです。ただし実質的に長期滞在を続けられる手段として、これまで多くの日本人に利用されてきました。
2024年に条件が厳格化され、定期預金要件が大幅に引き上げられています。カテゴリーによっては15万ドル以上の預金や不動産購入が必要になるなど、以前より参入障壁が高くなっている点に注意が必要です。
こんな人におすすめ
永住権にはこだわらず、まとまった資産をもとに長期滞在の拠点を確保したい人。マレーシア移住の詳しいガイドはこちら
8位. シンガポール
シンガポールは就労ビザ(EP)からSパスを経て、PR(永住権)を申請するルート自体は明確に存在します。ただし審査基準は非公開で、収入水準や勤務先の業種、納税実績などが総合的に評価されるため、競争率は8カ国の中でもっとも高い水準です。
取得できれば就労制限のなさや社会インフラの利便性は魅力的ですが、そのぶんハードルも最高クラスと理解しておく必要があります。目安として月8,000シンガポールドル程度の給与水準や、政府が人材獲得を重視する業種(金融・テクノロジー等)であることが、審査で有利に働くとされています。
こんな人におすすめ
すでに専門性の高いキャリアがあり、アジアの金融・ビジネスハブを拠点にしたい人。シンガポール移住の詳しいガイドはこちら
永住権が取りやすい国 比較一覧表

ここまで紹介した8カ国を、必要年数・投資や収入の要件・語学要件・ルートの明確さで一覧にまとめました。
| 国 | 必要年数の目安 | 投資・収入要件 | 語学要件 | ルートの明確さ |
|---|---|---|---|---|
| オランダ | 5年 | 起業ビザの事業要件 | A2レベル | 明確 |
| カナダ | 最短1年程度 | ポイント制で変動 | IELTS CLB7以上 | 明確 |
| オーストラリア | 4年程度 | 雇用主指名が前提 | IELTS必須 | 明確 |
| ポルトガル | 5年 | 安定収入の証明 | A2レベル | 明確 |
| ニュージーランド | ポイント制で変動 | 職業・収入で評価 | 要件あり | 明確 |
| ドイツ | 5年 | 年金保険加入 | B1レベル | 明確 |
| マレーシア(MM2H) | 永住権ではなく10年更新制 | 預金・不動産要件(高め) | なし | やや異なる制度 |
| シンガポール | 目安なし(審査次第) | 非公開基準・競争率高い | なし | 存在するが狭き門 |
永住権取得の前に考えるべきこと

ここまでランキング形式で紹介してきましたが、大前提として永住権はゴールではなく、あくまで手段です。「取りやすい国」から国選びを逆算してしまうと、本来の目的を見失いやすくなります。
大切なのは「永住権が取れる国」ではなく、「自分が暮らしたい国」「事業を伸ばしやすい国」から逆算することです。永住権はその延長線上に自然と見えてくるものであり、最初から永住権ありきで国を選んでしまうと、生活の満足度や事業の成長スピードが後回しになるリスクがあります。
土居さんが繰り返し伝えているのは、まず海外でも通用する事業基盤を作ることが先で、永住権はその先にある選択肢の一つに過ぎない、という考え方です。ビザの種類や条件だけを見て国を決めるのではなく、海外で働く・稼ぐ手段全体を整理したうえで、永住権取得の具体的な条件を確認していく順番が現実的です。
事業基盤が先にあれば、永住権を申請するタイミングが多少ずれても生活は成り立ちます。逆に永住権の取得年数だけを起点に国を選んでしまうと、肝心の収入源が育たないまま在留期限だけが迫るという事態にもなりかねません。順番を間違えないことが、結果として一番の近道になります。
よくある質問
まとめ
永住権が取りやすい国は、必要年数・投資や収入の要件・語学要件・ルートの明確さという4つの軸で見ると、国ごとにはっきりとした違いがあります。中でもオランダは、日本人だけが使える起業ビザから5年で永住権につながる、数少ない明確なルートを持つ国です。
ただし、どの国を選ぶにしても、永住権を取ること自体を目的にしないことが何より重要です。事業基盤を作り、暮らしたい場所を見極めたうえで、その延長線上にある選択肢として永住権を捉えてください。
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出典:オランダ移民帰化局(IND)/カナダ移民難民市民権省(IRCC)/オーストラリア内務省/ポルトガル移民庁(AIMA)/ニュージーランド移民局/ドイツ連邦移民難民庁/マレーシアMM2H公式サイト/シンガポール移民局(ICA)













