海外移住するなら、どこがいいのか。治安、物価、ビザ、言語と調べるほど候補が増え、かえって決められなくなっていませんか。海外移住する国の選び方で迷っている方の多くは、情報が足りないのではなく、どの条件から決めるかという順番がまだ決まっていないだけだと私は感じています。
私はスイスとイギリスに10年住み、会社員として国を移ったあと、自分で事業を始めて住む国を選び直した経験があります。この記事では、その経験をもとに、海外移住する国の選び方を7つの判断軸と決める順番で整理します。終盤には自己診断チャートも用意しましたので、今の自分がどの段階にいるのかを確かめながら読み進めてみてください。
目次
※本記事は筆者個人の経験と、これまでサポートしてきた方々の事例にもとづいています。本記事のビザ・永住権などの制度に関する情報は2026年9月時点のものです。各国の制度は頻繁に変更されます。渡航・申請の前に、必ず各国移民局・大使館の公式サイトやビザの専門家に最新情報をご確認ください。
1. 海外移住の国の選び方で、多くの人が迷い続ける理由

海外移住の国の選び方を調べていくと、治安、物価、気候、食事、医療、ビザ、言語といった条件が横一列に並んだ情報にたくさん出会います。どれも大切な条件ですが、すべてを満たす国はありません。治安が良い国は物価が高く、物価が安い国はビザや言語のハードルがある。条件を並べた比較表を前にして手が止まってしまうのは、ごく自然なことです。
これまで多くの方の相談を受けてきて私が感じるのは、迷い続ける原因は情報不足ではないということです。迷いの原因は、どの条件から決めるかという順番が決まっていないことにあります。順番がないまま情報を集めても、候補が入れ替わるばかりで決めきれません。
よくあるのが、物価や税金の安さから国選びに入るケースです。生活費を抑えられるのは確かに魅力ですが、住んでみて心が満たされないと、数年で国を変えることになりやすいのです。私の場合、税金は国を選ぶときに最初には見ません。大事な情報ではありますが、候補を絞ったあとに確かめれば十分だと考えています。移住で後悔しやすいパターンについては、海外移住で後悔する人の共通点や海外移住の失敗例7パターンで詳しくまとめています。
もう一つ見落とされがちなのが、移住の手段を海外就職や駐在の前提で考えてしまうことです。雇われて海外に住む場合、どの国に住むかを決めるのは会社や雇用主で、国を選ぶ主導権は自分にありません。仕事を失えば、その国に住み続けることも難しくなります。ただ、実は別の道があります。自分の事業を持って移住するという道です。この選び方については、3章と7章で詳しくお伝えします。
2. 海外移住の国選びは「決める順番」で変わる:7つの判断軸の全体像

海外移住の国選びでいちばん大切なのは、判断軸の数ではなく、どの軸から決めるかという順番です。私が考える海外移住の選び方の基準は、次の7つです。
| 順番 | 判断軸 | 自分への問い |
|---|---|---|
| 軸1 | 心が満たされる国か | 住んでいる自分を想像して、心が動く国はどこか |
| 軸2 | 永住権までの出口があるか | その国で5年後、10年後も住み続けられるルートはあるか |
| 軸3 | 自分の事業で入れるビザがあるか | 雇われなくても、個人事業主として在留できる制度はあるか |
| 軸4 | 今の稼ぐ力で条件を満たせるか | ビザの収入・資金の条件を、自分の事業で証明できるか |
| 軸5 | 家族にとってどうか | パートナーの生き方、子どもの教育と両立するか |
| 軸6 | 言語の負荷に耐えられるか | 英語や現地語で、暮らしと仕事が回るか |
| 軸7 | 暮らしの安心(治安・物価・医療) | 安全に、無理のない生活費で暮らせるか |
7つの軸は、大きく3つの段階に分かれます。まず最初の3つ、心・出口・入口で候補の国を絞ります。次の2つ、稼ぐ力と家族で、絞った候補を自分の現実と重ねます。そして最後の2つ、言語と暮らしの安心は、国を落とすための足切りではなく、住み方を調整するための項目として確かめます。
一般的な選び方とは逆に、治安や物価を最後に置いているのには、はっきりした理由があります。
POINT|海外移住の国選びで順番を逆にする理由
治安や物価は、住む都市や地区、暮らし方を選ぶことで、ある程度は自分で調整できます。一方で、永住権までのルートや、自分の事業で入れるビザがあるかどうかは、その国の制度で決まっていて、自分では変えられません。自分では変えられない条件から先に決める。これが、海外移住の国選びで迷わないための順番です。
3. 海外移住の国の選び方 最初に決める3つの軸:心・出口・入口

海外移住の国の選び方で最初に決めるのは、心・出口・入口の3つです。この3つが揃う国が、あなたにとっての本当の候補になります。
海外移住の国選びの軸1:心が満たされる国か
海外移住の国選びの出発点は、住んでいる自分を想像したときに、心が動くかどうかです。税金や物価ではなく、自分の心が満たされる国を選ぶ。国には、税率では買えない価値があります。文化の深さ、街に流れる時間、いろいろな国の人が混ざり合う多様性、そして住んでいるだけで幸せを感じる感覚です。
私の場合、最初にヨーロッパに住んだのはスイスでした。スイスには日曜日を休息日とする文化があり、お店はほとんど閉まり、街全体が静かになります。時間がゆっくりと流れる感覚を初めて味わい、住む場所を変えると幸せの感覚がこんなにも変わるのかと気づかされました。この段階では、現実的かどうかを気にしすぎず、心が動く国を妥協せずに挙げてかまいません。現実との擦り合わせは、このあとの軸で十分です。
海外移住の国選びの軸2:永住権までの出口があるか
心が動く国が挙がったら、次に確かめたいのが出口、つまりその国に5年後、10年後も住み続けられるルートがあるかどうかです。海外移住は、行ってから考えるものではありません。最初に出口を確かめておくことで、あとから国を変えざるを得なくなる事態を避けやすくなります。
ヨーロッパには、5年ほど住むことで永住権やEUの長期居住の道が開ける国があります。一方で、ビザの条件を満たし続けることで滞在が続く仕組みの国もあり、その場合は条件が変われば住み続けられなくなることもあります。同じように長く住めそうに見えても、中身は国によって異なります。
実際に、出口を確かめて移住先を変えた方がいます。フランスに住むことを目指していた諸橋さんは、フランスの長期滞在の在留許可が、最長の10年のものでも更新の審査がある仕組みで、永住権とは違うことを知りました。そこで、5年の滞在実績を積めば永住権に挑戦できるオランダへ移住先を切り替えています。好きな国と、住み続けやすい国は、必ずしも一致しません。この判断の詳しい経緯は、海外移住の国を変えた決め手は永住権で紹介しています。
海外移住の国選びの軸3:自分の事業で入れるビザがあるか
3つ目は入口です。会社に雇われなくても、個人事業主として在留できる制度がその国にあるかを確かめます。雇用のビザは雇ってくれる会社がなければ使えませんが、事業で入れるビザであれば、国を選ぶ主導権を自分で持つことができます。
たとえばヨーロッパでは、オランダには日蘭条約にもとづく個人事業主のルートがあり、ポルトガルやスペインにも、個人で事業をしている人が申請できるビザがあります。国ごとの条件は変わることもあるので、詳しくは移住しやすい国ランキング ヨーロッパ編や永住権が取りやすい国ランキングを参考にしてください。出口と入口は同じ国の制度の話なので、一緒に調べると効率よく絞り込めます。
4. 海外移住の国の選び方 次に重ねる2つの軸:稼ぐ力と家族

海外移住の国の選び方で、心・出口・入口の3つで候補が絞れたら、次は自分の現実を重ねていきます。ここで見るのが、稼ぐ力と家族の2つです。
海外移住の国選びの軸4:今の稼ぐ力で条件を満たせるか
海外移住の国選びで、多くの方が見落としがちなのがこの軸です。多くのビザは、形は違っても、収入や資金の証明を求めてきます。個人事業主のビザであれば事業の実態、リモートで働く人向けのビザであれば一定の収入の証明、といった具合です。
つまり、国選びの自由度は、自分の事業でどれだけ安定して稼げているかで広がっていきます。稼ぐ力があれば選べる国が増え、稼ぐ力がまだ育っていなければ、心が動く国があっても入口の条件を満たせないことがあります。
ただ、今の時点で条件を満たせなくても、その国をあきらめる必要はありません。国を先に決めるのではなく、稼ぐ力を先に整える順番に切り替えればいいのです。日本にいるうちから自分の事業を始め、少しずつ実績を積み上げていけば、選べる国は後からでも増やしていけます。条件を満たせないと分かったことは、あきらめる理由ではなく、次に何をすればいいかが見えたということでもあります。
海外移住の国選びの軸5:家族にとってどうか
家族で移住する場合、海外移住の国選びには家族の視点が加わります。ここで大切にしたいのは、子どもの教育から国を決めるのではなく、親がどう生きたいかを先に決めるという順番です。有名な学校や英語環境といった条件だけで国を選ぶと、親が現地の暮らしになじめず、結局国を変えることになるケースもあります。
私の場合、妻と「イギリスで生きる」と先に決めました。その結果、娘にはイギリスの教育が合っていた、という順番です。親が心から暮らしたいと思える国であれば、家族の暮らしも安定しやすいと感じています。
パートナーの仕事や意思も、同じくらい大切です。私の場合、スイスのときもイギリスのときも、移住の2年ほど前には家族に伝え、準備の時間を取るようにしていました。家族それぞれがその国でどう過ごしたいのかを話し合っておくことが、移住後の安心につながります。教育移住の国選びについては、教育移住とは?後悔しないための国選びで詳しくまとめています。
5. 海外移住の国選びで最後に確かめる2つの軸:言語と暮らしの安心

海外移住の国選びで、一般的には最初に比べられることの多い言語や治安、物価を、この記事ではあえて最後に置いています。大切でないからではなく、国を絞ったあとに確かめるほうが正しく判断しやすい項目だからです。
海外移住の国選びの軸6:言語の負荷に耐えられるか
言語は、英語圏かどうかだけで判断しないことをおすすめします。たとえばオランダは英語圏ではありませんが、英語を話せる人がとても多く、カフェやお店でも英語で暮らしが回ります。一方で、現地語の比重が大きく、英語だけでは日常の手続きや人付き合いに負担を感じやすい国もあります。
もう一つの視点が、仕事で使う言語と、生活で使う言語を分けて考えることです。自分の事業を日本のお客さまに向けて続けるのであれば、仕事の言語はそれほど変わりません。その場合に考えるべきは、買い物や役所の手続き、子どもの学校など、暮らしの場面でどれくらい現地の言葉が必要になるかです。仕事と生活を分けて見ると、言語の負荷は思っているより調整できることが分かります。
海外移住の国選びの軸7:暮らしの安心(治安・物価・医療)
治安や物価、医療は、暮らしの安心に直結する大切な条件です。ただ、同じ国の中でも、都市や地区によって大きく変わります。首都の中心部と地方都市では、家賃も街の雰囲気もまったく違います。そのため、国を絞ったあとに、住む街の単位で確かめるのが現実的です。
国ごとの数字を比べたい方は、治安がいい国ランキング、物価が安い国ランキング、ヨーロッパで住みやすい国ランキングにまとめていますので、あわせてご覧ください。
物価の安さは魅力ですが、それだけで国を選ぶと、住んでから心が満たされず、別の国を探し直すことになりやすいものです。暮らしの安心を確かめたあとは、もう一度、軸1の「その国で心が動くか」に立ち返ってみてください。
6. 海外移住の国の選び方 自己診断チャート

ここまでの7つの軸をもとに、海外移住の国の選び方を自分に当てはめるための自己診断チャートを用意しました。これは、あなたに合う国を当てるためのものではありません。7つの軸のうち、今どこで止まっているのかを知るためのものです。質問に順番に答えて、自分の現在地を確かめてみてください。
Q1. 住んでいる自分を想像して、心が動く国が1つ以上ありますか?
→ YES:Q2へ / NO:タイプA
Q2. その国に、5年後も10年後も住み続けられるルート(永住権や長期居住)があるか確かめましたか?
→ YES:Q3へ / NO:タイプB
Q3. 会社に雇われなくても、自分の事業で入れるビザがその国にありますか?
→ YES:Q4へ / NO:タイプB(出口と入口を一緒に確かめ直す)
Q4. 会社の給与以外に、自分の事業で得ている収入がありますか?
→ YES:Q5へ / NO:タイプC
Q5. その収入で、ビザの収入・資金の条件を満たせそうですか?
→ YES:Q6へ / NO:タイプD
Q6. パートナーや子どもと一緒に移住する予定ですか?
→ YES:タイプE / NO:タイプF
| タイプ | 現在地 | 次の一歩 | 参考になる記事 |
|---|---|---|---|
| A | 心の候補を探す段階 | ランキングや旅行を通して、住んでいる自分を想像できる国を探してみる | 移住しやすい国ランキング ヨーロッパ編/ヨーロッパで住みやすい国ランキング |
| B | 出口と入口を確かめる段階 | 候補の国の永住権ルートと、個人事業で入れるビザを調べてみる | 永住権が取りやすい国ランキング/永住権の取得条件を国別に比較 |
| C | 稼ぐ力を整える段階 | 国を決める前に、日本にいるうちから自分の事業を始めてみる | 海外移住の失敗例7パターン/パリ移住の体験談 |
| D | 事業を積み上げながら国を絞る段階 | 今の事業を地道に積み上げつつ、条件を満たせる国から検討してみる | 海外移住の資金はいくら必要?/海外移住の費用はいくら? |
| E | 家族の条件を重ねる段階 | 親の生き方を先に決め、そのうえで教育環境を重ねてみる | 教育移住とは?後悔しないための国選び |
| F | 具体的な準備に進む段階 | 費用と準備のスケジュールを組み、候補の国を実際に訪ねてみる | 海外移住の費用はいくら?/海外移住の完全ガイド |
チャートを試してみて、タイプCやタイプDになった方も多いのではないでしょうか。私がこれまで相談を受けてきた中でも、いちばん多いのがこの段階です。心が動く国があり、出口や入口も調べたけれど、自分の事業での収入がまだない、あるいは条件を満たすほどではない。多くの方が、ここで立ち止まっています。
私自身も、会社員のままでは住む国を自分で決められませんでした。だからこそ、タイプCやタイプDは遠回りではなく、国選びが本格的に始まる段階だと考えています。国を決める前に、日本にいるうちから自分の事業を小さく始めてみるのも一つの方法です。
ほかのタイプの方も、表の次の一歩から始めてみてください。どのタイプであっても、今の段階に合った一歩を踏み出すことが、国選びを前に進めてくれます。
国を選ぶ前に、自分が海外での暮らしに向いているのかを確かめておきたい方のために、海外移住の向き不向きを整理した適性チェックも別の記事にまとめています。
7. 国を選び直した私の経験から見えた、海外移住の国選びの本質

私自身の海外移住の国選びは、一度で決まったわけではありません。
私の場合、会社員として、まずP&Gの赴任でスイスに住み、その後イギリスに移りました。そしてイギリスで暮らしていたとき、次の赴任地としてトルコへの異動の打診を受けました。会社員として海外に住む以上、異動があるのは自然なことです。ただ、そのとき私は、会社員でいる限り住む国を自分で決めることはできない、という構造に気づきました。イギリスに住み続けたいと考えた私は、40歳で起業することを決めました。
始めたのは眼鏡の事業です。最初は赤字からのスタートで、順調な滑り出しとはいえませんでした。それでも本気で試行錯誤を重ねて事業を育て、自分の事業でイギリスに住み続ける道をつくり、イギリスの永住権にたどり着きました。
この経験から見えたのは、国選びの自由は、自分で稼ぐ力で広がるということです。会社に雇われている限り、住む国は会社の事情で決まります。自分の事業があれば、どの国に住むかを自分で選べるようになります。だからこそ、国を決める前に、稼ぐ力を整えるという順番があるのだと考えています。
ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。短期間で一気に稼ぐことを目指す必要はありません。むしろ、日本にいるうちから事業を地道に積み上げていくことが、結果的にはいちばんの近道になります。急いで大きくした事業は崩れやすく、ゆっくり積み上げた事業ほど、海外での暮らしを長く支えてくれます。
今、私はイギリスの永住権をベースに暮らしています。子育てが落ち着いたら、ポルトガルを二つ目の拠点にしたいと考えています。自分で稼ぐ力を一度持てば、国選びは一度きりの決断ではなく、人生の段階に合わせて選び直せるものになっていきます。
8. 海外移住の国の選び方についてよくある質問(Q&A)

ここまで、海外移住する国の選び方を、7つの判断軸と決める順番でお伝えしてきました。最初に心・出口・入口で候補を絞り、次に稼ぐ力と家族を重ね、最後に言語と暮らしの安心を確かめる。自己診断チャートで自分のタイプが分かった方は、そのタイプの次の一歩から始めてみてください。
住む国を誰かに決めてもらう人生より、自分の心で選び、自分の力で住み続ける人生のほうが、ずっと楽しいと私は思います。
国選びの順番を、自分の状況に当てはめて整理したい方へ。移住先の選び方は、私がヨーロッパで開催した勉強会の特別講義の中でもお伝えしています。
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