海外移住を真剣に考え始めると、多くの方が最初に突き当たるのが「結局、いくらかかるのか」という疑問です。初期費用、毎月の生活費、ビザ申請代、引越し費用――調べれば調べるほど情報がバラバラで、全体像がつかめないまま不安だけが積み上がっていく。
この記事では、海外移住の費用を「初期費用・生活費・ビザ代」の3軸で整理し、ヨーロッパ5カ国+アジア2カ国を国別×ビザルート別に比較します。さらに、多くのサイトが触れない「日本側の維持コスト」と「永住権までの5年間トータルコスト」まで踏み込み、「費用の前に知っておくべきこと」を最初にお伝えします。
目次
ご注意ください:本記事に記載されているビザ申請費用・生活費・制度要件はすべて目安であり、執筆時点(2026年6月)の情報を基にしています。各国のビザ要件・申請費用は頻繁に改定されるため、実際の申請前には必ず各国大使館・移民局公式サイトまたは専門家(移住コンサルタント・行政書士)にご確認ください。また、税金・年金に関する記述は一般的な説明であり、個別の税務・社会保険のご相談は税理士・社会保険労務士へお問い合わせください。
1. 海外移住の費用を調べる前に知っておくべきこと――「安い国」で選ぶと詰む理由
インターネットで「海外移住 費用」と調べると、「生活費が安い国ランキング」という記事がずらりと並びます。「タイのバンコクなら月10万円で暮らせる」「マレーシアなら月8万円でOK」――確かに数字として間違いではないのですが、この切り口から移住先を選ぶと、多くの方が後で詰まることになります。
なぜか。「生活費が安い国」と「自分が移住しやすい国」は、必ずしも一致しないからです。
「安い=簡単」ではない現実
たとえばマレーシアの「MM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)プログラム」は、かつて年収30万円程度の月収証明があれば申請できる比較的間口が広い制度でした。ところが2021年の改定で要件が大幅に引き上げられ、定期預金として100万リンギット(当時のレートで約2,600〜2,800万円相当)の資金証明が必要になりました。さらに2024年にはSilver/Gold/Platinumの3ティア制に再改定され、最低ランク(Silver)でも定期預金USD 150,000(約2,000万円超)が求められます。「物価が安い=移住しやすい」は過去の話で、制度は常に変動します。
タイのエリートビザ(現在はThai Privilege Cardに名称変更)も同様で、年々申請条件が厳しくなり、費用も上昇しています。「安かったから選んだのに、気づいたら条件が変わっていた」というケースは少なくありません。
また、仮に生活費が安くても、永住権へのルートが存在しない、あるいは非常に長い年数と高額の要件が求められる国は少なくありません。「10年後も住み続けたい」と思っても、ビザを更新し続けるコストや手間がかかり続ける。それは「安さ」とは別のコストです。
本当に先に決めるべきことは何か
費用を調べる前に確認すべきは、「どのルートで、何年住むのか」という出口設計です。
たとえば「5年後に永住権を取得してEUに定住したい」という目標があれば、永住権ルートが整備されているヨーロッパの個人事業主ビザが候補に入ります。「まず3年間だけ体験したい」「家族と一緒に住める環境が必要」――こうした条件が違えば、見るべき費用の内訳も変わります。
海外移住の費用を安さで比較する前に、「自分はどこで何年、どんな形で暮らしたいのか」を先に決めることが、後悔しない移住設計の出発点です。
この章のポイント
「安い国ランキング」は条件変更・制度改定によってすぐに陳腐化する
マレーシアMM2Hは2021年に要件が大幅引き上げ。タイのビザも年々厳格化
海外移住の費用より先に「どの国で・何年・どんなルートで」を決めることが先決
移住先選びの軸は「費用の安さ」ではなく「ビザ安定性・永住権接続・自分の事業との相性」
※各国のビザ要件・費用は頻繁に変更されます。最新・正確な情報は各国大使館または 外務省の海外安全情報 等の公式サイトでご確認ください。
2. 海外移住にかかる費用の全体マップ(フェーズ別×費目)
海外移住の費用は、大きく3つのフェーズに分けて考えると整理しやすくなります。「渡航前の準備フェーズ」「渡航直後の定着フェーズ」「その後の生活フェーズ」です。それぞれで必要なお金の性質がまったく異なります。
準備フェーズ(渡航前)
渡航前にかかる費用は、一時的な出費がほとんどです。主な項目を確認しておきましょう。
パスポートの取得・更新(0〜1.6万円程度)は有効期限が切れていれば必須です。海外への引越し費用は、航空便か船便かで大きく変わり、荷物の量にもよりますが20〜50万円が目安です。家具や大型家電を現地調達する場合はこの費用が不要になる一方、現地での調達費用が別途かかります。
航空券(片道5〜20万円程度)は行き先・時期によって大きく異なります。海外旅行保険や海外在住者向けの医療保険は、ヨーロッパ圏では現地の民間保険への加入を求められることが多く、年間5〜30万円程度と幅があります。
ビザ申請費用は国とルートによって大きく異なるため、3章で国別に詳しく見ていきます。
移動・定着フェーズ(渡航直後〜3カ月)
住居の初期費用は、国によって慣行が異なりますが、デポジット(敷金相当)として月額家賃の1〜3カ月分が必要なケースが多いです。アムステルダムやパリなど人気都市では家賃自体が高いため、これだけで50〜150万円規模になることもあります。
家具・家電は、家具付き物件(furnished)を選べば不要ですが、unfurnished物件の場合は0〜30万円の初期投資が必要です。現地SIMカードの取得、生活立ち上げの雑費(食器・日用品・自転車等)は5〜10万円程度見ておくと安心です。
生活フェーズ(月額ランニングコスト)
渡航後の月々の生活費は「家賃・食費・交通費・通信費・保険料・税金」の6項目が中心です。国・都市・生活スタイルによって大きく変わるため、3章の国別比較で具体的な数字を確認してください。
海外移住の費用の全体マップ(目安)
【準備フェーズ(一時費用)】
パスポート更新:0〜1.6万円
航空券(片道):5〜20万円
海外引越し費用:20〜50万円
海外保険(年額):5〜30万円
ビザ申請費用:国・ルートによる(3章参照)
【定着フェーズ(渡航直後〜3カ月)】
住居デポジット:月額家賃×1〜3カ月分
家具・家電:0〜30万円(家具付き物件なら不要)
生活立ち上げ雑費:5〜10万円
【生活フェーズ(月額ランニング)】
家賃・食費・交通費・通信費・保険・税金(国別に異なる。3章参照)
※費用はすべて目安です。為替レート・物価変動・個人の生活スタイルによって大きく異なります。
3. 海外移住の費用を国別×ビザルート別に比較(ヨーロッパ5カ国+アジア2カ国)
ここからが本章の核心です。同じ国でもビザルートによって初期費用が大きく変わります。以下では「ビザ申請費用」「初期費用の目安」「月額生活費(単身)」「永住権への接続有無」の4項目を統一フォーマットで国ごとに比較します。
なお、いずれの数字も目安です。申請時期・個人の状況・為替レートによって変動するため、正確な費用は各国の公式情報または専門家にご確認ください。
オランダ(日蘭条約・個人事業主ビザ)
日本とオランダの間には「日蘭通商航海条約」(通称:日蘭条約)が存在し、日本人は個人事業主として比較的スムーズにオランダで事業活動をする権利を得られます。就労・起業を目的とした移住でヨーロッパを検討するなら、最も制度が整備されたルートのひとつです。
ビザ申請費用の目安
オランダへの申請は大使館またはIND(オランダ移民局)経由となり、€405〜423程度(約6.5〜7万円、2025〜2026年時点)。KvK(商工会議所)への事業者登録費用として€85.15(2026年時点)が別途かかります。
初期費用の目安(単身)
渡航費・保険・住居デポジット・生活立ち上げをまとめると、150〜250万円程度が現実的な初期費用です。アムステルダムは欧州でも家賃が高水準のため、郊外や他都市(ハーグ・ロッテルダム等)を選ぶと抑えられます。
月額生活費の目安(単身)
アムステルダム:€2,000〜2,500(約37〜46万円)
ハーグ・ロッテルダム:€1,600〜2,000(約30〜37万円)
永住権への接続
5年間継続居住でオランダ永住権申請が可能。永住権取得後はEUの長期居住者資格も得られ、EU内他国への移動もしやすくなります。事業継続の実績と所得証明が求められます。
ポルトガル(D7ビザ / D2ビザ)
「物価が比較的手頃なヨーロッパ」として注目を集めてきたポルトガル。D7ビザ(受動的収入・リモートワーク向け)とD2ビザ(起業家・フリーランス向け)があります。近年は人気上昇に伴いリスボン・ポルトの家賃が上がっていますが、ヨーロッパ主要都市と比べるとまだ手頃です。
ビザ申請費用の目安
国家ビザ申請費用:一律110ユーロ(約1.8万円、ポルトガル外務省公式)
※D7・D2ともに同額
初期費用の目安(単身)
渡航費・保険・住居デポジット・生活立ち上げで100〜180万円程度。
月額生活費の目安(単身)
リスボン:€1,200〜1,600(約22〜30万円)
ポルト・内陸部:€900〜1,300(約17〜24万円)
永住権への接続
5年間継続居住でポルトガル永住権申請が可能。その後ポルトガル国籍の取得も視野に入ります。
ドイツ(フリーランスビザ / EU Blue Card)
ドイツはヨーロッパ最大の経済圏。フリーランス・自営業者向けの「フリーランスビザ」(Aufenthaltserlaubnis für Selbstständige)は分野によって取得難易度が異なりますが、デジタルマーケティングやクリエイティブ系は申請実績があります。高い給与水準の専門職なら「EU Blue Card」というルートもあります。
ビザ申請費用の目安
フリーランスビザ:110ユーロ前後(約1.7万円)
EU Blue Card:110ユーロ前後
初期費用の目安(単身)
100〜200万円程度(都市によって住居デポジットが異なる)
月額生活費の目安(単身)
ベルリン:€1,500〜2,000(約28〜37万円)
ミュンヘン:€2,000〜2,800(約37〜52万円)
永住権への接続
5年間(EU Blue Cardは27カ月、B1ドイツ語レベルなら21カ月)継続居住で永住許可(Niederlassungserlaubnis)申請が可能です。
スペイン(デジタルノマドビザ / 非営利ビザ)
2023年に導入されたスペインの「デジタルノマドビザ」は、スペイン国外のクライアントへのリモートワーク・フリーランス活動に特化した新しいビザです。バルセロナ・マドリードは人気が高い一方、バレンシア・セビリア等の都市は生活費が抑えめです。
ビザ申請費用の目安
デジタルノマドビザ:80〜100ユーロ程度(約1.3〜1.6万円)
初期費用の目安(単身)
100〜180万円程度
月額生活費の目安(単身)
バルセロナ・マドリード:€1,300〜1,800(約24〜33万円)
バレンシア・セビリア:€1,000〜1,400(約19〜26万円)
永住権への接続
5年間継続居住でスペイン永住権申請が可能です。
フランス(Passeport Talent / VLS-TS)
文化・歴史・食・言語。フランスは「住みたいヨーロッパの国」として常に上位に来る国です。クリエイター・起業家・フリーランス向けの「Passeport Talent」というビザカテゴリがあります。フランス語能力の壁があるものの、パリはビジネス・文化の両面で世界トップクラスの都市です。
ビザ申請費用の目安
VLS-TS(長期滞在ビザ):約99〜225ユーロ程度(約1.6〜3.6万円。申請カテゴリ・時期により変動。最新情報はフランス大使館公式で要確認)
初期費用の目安(単身)
パリは住居デポジットが特に高く、150〜250万円程度になりやすいです。
月額生活費の目安(単身)
パリ:€1,800〜2,500(約33〜46万円)
地方都市(リヨン・ボルドー等):€1,300〜1,800(約24〜33万円)
永住権への接続
5年間継続居住でフランス永住許可申請が可能です。
マレーシア(MM2H / DE Rantau)
アジアの中では「物価が安く英語が通じるヨーロッパに近い雰囲気」として人気が高いマレーシア。ただし、前章でも触れた通りMM2Hは2021年に条件が大幅引き上げになり、さらに2024年にはSilver/Gold/Platinumの3ティア制に再改定されました。最低ランク(Silver)でも定期預金USD 150,000(約2,000万円超)が求められ、一般的な会社員が目指せる現実的な選択肢ではなくなっています。
デジタルノマド向けの「DE Rantau」は比較的新しいビザで、年収USD 24,000(テック職の場合。非テック職はUSD 60,000/年)の収入証明が必要です。
ビザ申請費用の目安
DE Rantau:RM1,000程度(約3〜4万円。公式サイトで要確認)
月額生活費の目安(単身)
クアラルンプール:10〜17万円程度
永住権への接続
現状、マレーシアの永住権(PR)取得は難易度が高く、確実なルートとは言いにくい状況です。
タイ(LTRビザ / 結婚ビザ)
バンコクの利便性・物価の手頃さで根強い人気のタイ。2022年に導入された「LTR(Long Term Resident)ビザ」は10年間の長期滞在が可能で、富裕層・リモートワーカー・高度人材などカテゴリに分かれています。ただし、タイも永住権取得の要件は非常に厳しく、明確なルートが確立しているとは言えません。
ビザ申請費用の目安
LTRビザ:50,000バーツ(約21〜23万円)程度
月額生活費の目安(単身)
バンコク:8〜15万円程度
永住権への接続
タイの永住権は取得難易度が非常に高く、多くの在タイ日本人は長期滞在ビザを更新し続けています。永住権まで設計するルートとしては不確かさが残ります。
海外移住の費用 国別比較(参考目安)
| 国 | ビザ申請費用目安 | 月額生活費目安(単身) | 永住権接続 |
|---|---|---|---|
| オランダ | €405〜423(約7.5〜8万円) | €1,600〜2,500(約30〜46万円) | 5年で可 |
| ポルトガル | €110(約2万円) | €900〜1,600(約17〜30万円) | 5年で可 |
| ドイツ | €110前後(約2万円) | €1,500〜2,800(約28〜52万円) | 約2〜5年で可 |
| スペイン | €80〜100(約1.5〜1.9万円) | €1,000〜1,800(約19〜33万円) | 5年で可 |
| フランス | €99〜225(要確認) | €1,300〜2,500(約24〜46万円) | 5年で可 |
| マレーシア | RM1,000程度(約3〜4万円) | 約10〜17万円 | 確立ルートなし |
| タイ | 50,000バーツ(約21〜23万円) | 約8〜15万円 | 取得難易度高 |
※目安数字です。為替・申請時期・個人条件で変動します。最新情報は各国大使館または専門家へご確認ください。
※上記のビザ費用・生活費はあくまで参考数字であり、公式な情報ではありません。実際の申請前には必ず各国大使館公式サイトまたは移住専門の行政書士・弁護士にご確認ください。
4. 海外移住の費用で見落としがちな「日本側のコスト」
海外移住の費用を計算するとき、多くの方が「現地の生活費」だけを見て終わります。しかし見落としがちな大きなコストが、「移住後も日本側で発生し続ける費用」です。これを計算に入れていないと、渡航後に想定外の出費が続くことになります。
国民年金の任意加入(月17,920円〜)
海外に移住すると日本の国民年金は「加入任意」になります。支払わなくてもペナルティはありませんが、支払いをやめると将来受け取れる老齢年金額が減ります。継続して納める場合、月額17,920円(2026年度)、年間で約21万6,000円のコストが発生します。
将来の年金設計を考えるなら、任意加入の選択は移住前にしっかり検討する必要があります。
住民税の最終年度分
日本を出国しても、1月1日時点で住民登録があった場合、その年の住民税は全額発生します。たとえば「3月に出国」であっても、前年1月1日に日本に在住していたなら住民税が課されます。これは「移住後に日本から届く請求書」として多くの方が驚くコストです。
出国タイミングや住民票の抜き方によって変わるため、事前に税務署や自治体への確認が必要です。
国民健康保険の喪失と民間保険への切替
海外移住と同時に国民健康保険は脱退(または資格喪失)になります。その代わりに、現地の民間医療保険への加入が必要です。特にヨーロッパのビザ申請では、一定基準を満たす医療保険への加入が申請条件に含まれていることが多い。保険の内容や年齢によって年間10〜30万円の差が生まれることもあります。
日本の持ち家・車の維持または処分
日本に家や車を残している場合、維持費が発生し続けます。住宅の場合は固定資産税・管理費・修繕費、車は車検・保険・駐車場代と、「使っていないのに払い続ける費用」が積み上がります。逆に処分すれば手間と費用がかかりますが、長期的にはランニングコストが消えます。
これらを合算すると、年間50〜100万円を「日本側に払い続ける」ケースも珍しくありません。現地の生活費とは別に、この日本側コストを家計計画に組み込んでおくことが重要です。
注意:国民年金・住民税・保険の扱いは個人の状況によって大きく異なります。正確な取り扱いについては、税理士・社会保険労務士・各自治体の窓口にご相談ください。
5. 海外移住の費用を永住権まで逆算――5年間のトータルコスト
多くの費用比較サイトが「初年度にいくらかかるか」で終わっています。でも海外移住は1年で完結しません。「本当に移住を成立させる」ためのコストを考えるなら、永住権を取得するまでの5年間を逆算して試算する必要があります。
ここではオランダを例に、海外移住の費用を5年間のトータルで具体的に見ていきます。
オランダ×個人事業主ビザの5年間トータルコスト試算
1年目(初期費用+定着期)
ビザ申請費用・KvK登録・渡航費・引越し費・保険・住居デポジット・家具家電などの初期費用:約150〜250万円
年間生活費(月額€1,800〜2,000×12カ月):約400〜444万円
日本側の維持コスト(年金・住民税・保険等):約50〜100万円
1年目合計:約550〜750万円
2〜5年目(定着期)
年間生活費:約350〜400万円×4年=約1,400〜1,600万円
日本側コスト:約50〜100万円×4年=約200〜400万円
その他(ビザ更新・旅行・急な出費等):年間30〜50万円×4年=約120〜200万円
2〜5年目合計:約1,720〜2,200万円
5年間合計:約2,270〜2,950万円
この数字を見て、「そんな大金を用意しなければ移住できないのか」と思った方もいるかもしれません。でも、ここで発想を転換する必要があります。
海外移住の費用は「貯金」ではなく「事業設計」で乗り越える
5年間で約2,500〜3,000万円と聞くと膨大に見えますが、これは月々の「支出」の積み上げです。貯金を切り崩して生活するモデルなら5年間持つための貯金が必要ですが、現地で事業から月25〜30万円の収入があれば、生活費のほとんどはその月の売上でカバーできます。
つまり、必要なのは「5年分の貯金」ではなく「渡航〜3カ月間の定着資金(100〜200万円)+半年分程度の生活費バッファ(約100〜200万円)+安定した事業収入」という構造です。
「費用を下げる国を探す」のではなく、「事業を作って収入を確保してから国を選ぶ」。これが海外移住の費用問題に対する本質的な答えです。
ただし、急いで収入を上げようとするのは危険です。私がお会いしてきた方の中で、海外移住後に長く続いている方に共通するのは、「短期間で一気に稼いで渡航する」ではなく、「地道に事業を積み上げ、収入が安定してから腰を据えて渡航する」という姿勢でした。焦って渡航した結果、収入が安定しないまま資金が底をついてしまったケースも少なくありません。
POINT|海外移住の費用を5年間乗り越える設計の核心
海外移住の費用は「安い国を選ぶ」より「事業から安定した収入を得てから渡航する」方が、長期的にはるかに現実的です。初年度の立ち上げ資金+半年分のバッファを準備し、現地での事業収入でランニングコストをカバーする設計が、5年後の永住権取得まで続ける鍵になります。
6. 海外移住の費用に効く為替リスクを定量化する――円安10%シナリオ
海外移住の費用計算で「為替リスクに注意してください」と書いているサイトは多いです。しかし実際に数字で示しているサイトはほとんどありません。ここでは定量的に見ていきます。
円安10%で海外移住の費用はどう変わるか
ユーロ圏に移住して月€2,000の生活費がかかる場合を例にとります。
1ユーロ=160円のとき:月32万円(年384万円)
1ユーロ=176円(10%円安)のとき:月35.2万円(年422万円)
差額:月3.2万円、年間38万円、5年間で約190万円
これは「何もしないのに190万円多く必要になる」ということです。実際に過去5年間の為替を振り返ると、2021年頃は1ユーロ=130円前後だったものが、2024年には170円近くまで上昇しました。約30%の円安です。この規模の変動が実際に起きているわけです。
為替リスクへの対策
為替リスクを完全に消すことはできませんが、軽減する方法はあります。
① 現地通貨建ての収入源を一部持つ
もっとも有効なのは、現地(ユーロ圏)のクライアントや取引先から現地通貨で受け取る収入を一部持つことです。収入もユーロ建てにすることで、生活費とのミスマッチが減ります。
② 円以外の通貨で資産を分散する
WiseやRevolutなどのマルチカレンシー口座を活用し、円だけに資産を集中させない方法も有効です。
この両方の選択肢は、「自分で事業を持っている」ことで初めて実現しやすくなります。雇用されている状態では、受け取る通貨も職場が決めることになります。事業を持つことが、海外移住の費用における為替リスクへの対策にもなるという構造です。
為替変動が海外移住の費用に与える影響(参考)
月€2,000の生活費がかかる場合:
| レート | 月額(円換算) | 年額(円換算) |
|---|---|---|
| €1=140円 | 28万円 | 336万円 |
| €1=160円 | 32万円 | 384万円 |
| €1=176円(10%高) | 35.2万円 | 422.4万円 |
| €1=200円(25%高) | 40万円 | 480万円 |
※上記はあくまでシミュレーションです。実際の為替レートは市場動向によって変動します。
7. 海外移住の費用にまつわるよくある質問(Q&A)
8. まとめ――海外移住の費用は「出口設計」で決まる
海外移住の費用について、この記事でお伝えしてきたことをまとめます。
① 海外移住の費用は3軸(初期費用・月額生活費・ビザ代)とフェーズ(準備・定着・生活)で整理する
海外移住の費用は種類も多く、一度に把握しようとすると混乱します。「いつの、何のための費用か」をフェーズ別に整理することで全体像がつかめます。
② 同じ国でもビザルートによって初期費用は大きく変わる
国を決めることと、どのビザルートで入るかは別の問題です。オランダなら日蘭条約の個人事業主ビザ、ポルトガルならD7かD2か――ルートによって申請費用・審査基準・永住権への道筋がまったく異なります。
③ 「費用を抑える国を探す」より「事業を作って収入を確保する」が先
5年間のトータルコストを逆算したとき、費用が安い国を選ぶことよりも、現地で月25〜30万円の事業収入を確保する設計の方が、移住を長く続けるうえでずっと重要です。焦らず地道に事業を積み上げてから移住する――その順番が、5年後の永住権取得まで続く移住を実現させます。
海外移住を「いつか」で終わらせないために。
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