海外移住を真剣に考えたとき、最初にぶつかる壁は「仕事」です。「海外で暮らしたい。でも、仕事はどうすればいいのか」という問いで、一歩目を踏み出せないでいる方は少なくありません。
本記事では、海外移住しながら働く方法を転職・駐在・現地採用・ワーキングホリデー・フリーランス・起業の5つに整理し、それぞれのメリット・デメリットを比較します。年代別の仕事戦略、準備段階で多い後悔のパターン、見落としがちな費用まで体系的にまとめました。さらに、多くの比較記事が触れていない「雇われる以外の第4の選択肢」として、海外に住みながら自分の事業を持つというルートも、海外で実際に事業を経営している立場からお伝えします。
目次
※本記事はビザ要件・法律・税務等に関する情報を含みますが、内容の正確性・最新性を保証するものではありません。実際の手続きは各国の公式機関や専門家にご確認ください。
海外移住で「仕事はどうする?」に答える全体マップ

海外移住して働く日本人の数は、過去最多の水準に達しています。
外務省「海外在留邦人数調査統計(令和7年版)」によれば、2025年10月1日時点での在留邦人の総数は約129万8,170人。このうち永住者は約58万8,486人で、統計開始以来の過去最高を記録しています。
外務省データ:2025年10月1日時点(令和7年版)
在留邦人 総数:約129万8,170人
うち永住者:約58万8,486人(過去最高)
出典:外務省「海外在留邦人数調査統計 令和7年版」
永住者数が過去最高を更新しているという事実は、「一時的に行く」から「腰を据えて海外で暮らし、仕事をする」という選択に変わってきていることを示しています。
ただし、この数字の背景で注目すべきは「増えている」事実よりも、「どういう働き方で海外に根を張っているか」の違いです。転職で現地採用になったのか、駐在で送り込まれたのか、自分の事業を持って移住したのか。その違いが5年後・10年後の自由度を大きく左右します。
海外移住と仕事を同時に考えるとき、選択肢は転職だけではありません。次の章で、5つの方法を整理します。
※最新データは 外務省公式サイト からご確認ください。
海外移住して働く5つの方法|メリット・デメリット比較

海外移住して働く方法は、大きく5つに分類できます。本章では各方法を「概要→メリット→デメリット→こんな人に向いている」の統一フォーマットで整理します。
転職(現地採用)で移住する|海外就職の実態
移住先の国にある現地企業や外資系企業に採用され、現地の雇用条件のもとで働く方法です。海外移住の仕事を考えたとき、最もイメージしやすい選択肢でしょう。
メリット
① 就労ビザが雇用とセットで取得できる(自分で申請する手間が少ない)
② 現地の社会保険・福利厚生に加入できるケースがある
③ 現地社会に深く入り込めるため、語学力や人脈が伸びやすい
デメリット
① 給与は現地水準が適用されるため、特にアジア圏では日本より下がるケースが多い
② 就労ビザの保有権は雇用主にある。解雇されると即帰国を余儀なくされるリスクがある
③ 転職先を見つけるには語学力と現地で通用するスキルが必要で、準備が高いハードルになる
こんな人に向いている
現地の文化や職場環境に飛び込みたい、または特定の国での就業経験をキャリアに積みたい方。転職・現地採用の詳細については、B-01・B-02の記事で詳しく解説しています。
海外赴任・駐在で移住する|待遇と引き換えに失うもの
日本の企業に所属したまま、会社の命令で海外拠点に赴任する形態です。給与は日本基準のまま、現地手当や住宅補助が加わるケースが多く、待遇面では5つの方法のなかで最も手厚いとされています。
メリット
① 給与水準が維持され、現地手当・住宅補助・渡航費などが支給されることが多い
② 就労ビザは会社が手配してくれるため、自分で動く必要がない
③ 日本のキャリアの延長線で海外経験を積める
デメリット
① 行き先も赴任期間も帰国のタイミングも、すべて会社が決める
② 任期が終われば帰国を命じられる。「住みたい国に住み続ける」自由はない
③ 会社の業績・方針変更によっては突然の帰国命令もある
こんな人に向いている
今の日本企業のキャリアを維持しながら海外経験を積みたい方。ただし、「海外移住の目的が自分の好きな場所で暮らし続けること」であれば、駐在はその手段にはなりにくいという点は最初に理解しておく価値があります。
ワーキングホリデーで働く|体験には最適だが出口設計が必要
日本と協定を結んでいる国・地域(外務省によれば2025年時点で29カ国・地域)で、18〜30歳の年齢制限のもとで一定期間滞在しながら働ける制度です。
メリット
① ビザ申請のハードルが低く、現地生活を体験しながら働ける
② 語学学校への通学と仕事を組み合わせた生活ができる
③ 将来的な移住先を自分で確かめる「試住」として機能する
デメリット
① 年齢上限(多くは30歳以下)があり、使えるのは一度きり
② 現地のカフェ・農場・ホテル等の短期就労が中心で、スキル蓄積が難しい
③ ワーホリビザから永住権への道が直接つながるケースは限られる
こんな人に向いている
20代で海外生活を体験したい方、移住先の候補を絞るための試住として活用したい方。ただし、「住み続ける」「永住権を取る」という出口まで設計してから使うのと、行き当たりばったりで使うのとでは、その後の展開が大きく変わります。
リモートワーク・フリーランスで移住する|自由度と落とし穴
日本または海外のクライアントから仕事を受注し、場所を問わず働く形態です。Webデザイン、エンジニアリング、ライティング、マーケティング支援などが代表的な職種です。
メリット
① 場所を選ばずに働けるため、住みたい国に居住しながら仕事ができる
② 日本のクライアントから受注すれば、現地の語学力に依存しにくい
③ 会社に所属しないため、移住先や生活スタイルの変更が柔軟
デメリット
① 多くの国で、観光ビザ滞在中の業務(リモートワーク含む)は法律上グレーまたは違法。適切なビザが必要
② クライアント1社への依存は「実質的な雇用」と変わらず、依頼が止まれば収入も止まる
③ 案件を自分で獲得し続けるための営業力・実績づくりが常に必要
こんな人に向いている
特定のスキルを持ち、案件獲得の実績があるか、それを構築する意思がある方。ビザの問題については各国の公式情報を確認することが重要です。なお、フリーランスとして「自分の事業を持つ」段階に育てた場合は、次の「起業」との境界が近くなります。
海外で起業する|ビザ・永住権・年齢に縛られない選択肢
移住先の国で個人事業または法人を設立し、自分のビジネスで稼ぐ方法です。「起業」というと大きなリスクを伴うイメージがありますが、一人のマーケターやコンサルタントとして個人事業主ビザで入る形も含まれます。
メリット
① 個人事業主ビザが用意されている国(オランダの日蘭条約ビザ、ポルトガルのD2ビザ等)では、雇用主に依存せず自分でビザを保有できる
② 事業収入に上限はなく、スキルと顧客次第で稼ぐ力を伸ばせる
③ 個人事業主ビザから5年後に永住権取得を目指せるルートがある
デメリット
① 事業が軌道に乗るまでの収入が不安定な時期がある
② 現地の税務・法務・ビザ要件を自分で理解し対応する必要がある
③ 日本での実績ゼロからスタートする場合、顧客獲得には時間がかかる
こんな人に向いている
「雇われ続ける」ことへの不安があり、自分の力で稼ぐ基盤を作りたい方。特に雇用主に依存しないビザを自分で保有し、永住権まで逆算して設計したい方には合理的な選択肢です。
海外移住の仕事、5つの働き方を一覧で比較する

2章で解説した5つの方法を、「収入水準・ビザ自由度・場所の選択肢・永住権接続・年齢の壁・必要スキル」の6軸で比較します。
| 項目 | 転職(現地採用) | 海外赴任・駐在 | ワーホリ | フリーランス・リモート | 海外起業 |
|---|---|---|---|---|---|
| 収入水準 | 現地給与水準(国による差大) | 日本基準+手当(高め) | 現地最低賃金〜中程度 | スキル次第(上限なし) | 事業次第(上限なし) |
| ビザ自由度 | 雇用主が保有・解雇=失効 | 会社が手配・転職不可 | 1年限定・更新なし | 国による(グレーあり) | 自分が保有・雇用依存なし |
| 場所の選択肢 | 就職先のある国のみ | 会社の指定国のみ | 協定国のみ(29カ国・地域) | 比較的自由(ビザ次第) | 事業主ビザのある国を選べる |
| 永住権接続 | 雇用継続が前提 | 帰国命令で断絶リスク | 直接つながらない | 国によるが不確実 | 個人事業主ビザから5年で接続可 |
| 年齢の壁 | 採用年齢制限あり(国・職種次第) | 会社の判断次第 | 30歳以下が多数 | 実績次第で年齢不問 | 年齢不問 |
| 必要スキル | 語学+現地通用のスキル | 日本企業でのキャリア | 基礎的な生活語学 | 特定スキル+案件獲得力 | マーケティング・顧客獲得力 |
表を見ると、海外起業(個人事業主ビザルート)は複数の軸で他の方法にない特徴を持っています。収入の上限がなく、ビザを自分で保有でき、年齢に関係なく選べ、永住権に接続しやすい。これは「就職先を探すのが難しい」「どこかの会社に帰属したくない」という方にとって合理的な選択肢です。
ただし、事業は一朝一夕には育ちません。この点については6章で詳しく述べます。
年代別に考える海外移住の仕事戦略

海外移住と仕事の最適解は、年代によって変わります。30代・40代・50代以降、それぞれの現実的な選択肢と戦略を整理します。
30代の海外移住と仕事|スキルを武器に稼ぐ力の土台を作る
30代は海外移住の仕事を考えるとき、最も選択肢が広い時期です。現地採用の求人でも30代の実務経験は評価されますし、ワーキングホリデーの年齢上限(30歳以下が多数)に引っかかるのも今が最後の機会という方もいます。
一方で、家庭を持ち始める時期とも重なるため、収入の安定性と場所の自由度を同時に求める方が増えます。現地採用では給与が日本より下がるケースも多く、「キャリアダウンしてまで移住すべきか」という問いに直面することも少なくありません。
30代に意識してほしいのは、「稼ぐ力の土台を今のうちに作ること」です。雇用に依存している間は、移住先も収入も誰かの決定に左右されます。在職中にマーケティングや事業構築のスキルを蓄積し、将来的に自分で事業を持てる準備を始める。その種まきができるのが30代です。
40代の海外移住と仕事|武器を持っている世代こそ有利
40代での海外移住は「もう遅い」と思われがちですが、実際には逆です。現地採用の求人で年齢的な壁を感じる場面は増えますが、40代には30代が持っていない武器があります。20年近い実務経験・業界人脈・資金力、そして何より、業種の深い専門知識です。
これらは事業に転用したとき、大きな差別化になります。たとえば前職の専門性を活かして、日本企業の海外展開支援をコンサルティングする。あるいは日本人向けの専門サービスを海外で提供する。40代は「会社の名刺なしで、自分の力でクライアントを獲得できるか」を問われる時期でもあります。
雇用ベースの移住だけに絞って考えると選択肢は狭まりますが、自分の経験を事業に変える発想を持つと、可能性は逆に広がります。
50代以降・老後の海外移住と仕事|事業収入があるかないかで安心感が変わる
50代以降の海外移住では、「働き続けるか」よりも「海外で生活費をどう確保するか」という問いになります。年金だけを収入源にした移住と、小さくても事業収入が継続している状態での移住では、生活の安心感がまったく違います。
事業収入がゼロでも移住はできます。しかし、医療費・為替変動・介護リスクなど、老後の海外生活には想定外の出費が発生しやすい。そのとき、「何かあれば自分で動けば収入が生まれる」という基盤があるかどうかが、精神的な安定に直結します。
老後移住を考える方にとって重要なのは、「生活費を安く抑えられる国を探す」だけでなく、「どこにいても小さく稼げる仕組みを持っておく」という準備です。
海外移住の仕事で後悔しないために知っておくべきこと

海外移住後に「こんなはずじゃなかった」となる方の多くは、移住前の設計段階で見落としがあります。3つのポイントを整理します。
「仕事が見つからない」は移住失敗の最大原因|移住前に設計する
現地採用を目指して移住したものの、就職が決まらないまま貯金を切り崩し、数ヶ月後に帰国するというケースは珍しくありません。「向こうに行けばなんとかなる」という楽観的な前提が、最大のリスクです。
現地採用で就職できる確率は、語学力・業種・対象国によって大きく異なります。たとえばヨーロッパの現地企業で日本人を採用するポジションは限られており、英語が話せるだけでは差別化になりません。競合は現地の人々や複数の言語が話せる他の移住者たちです。
移住後に仕事を探す前提で動くのではなく、移住前に収入の確保ルートを決めておくことが、失敗を防ぐための基本です。特に現地採用ルートを選ぶ場合は、移住前から現地のリクルーターやLinkedInを通じて内定を取ってから渡航することを推奨します。
準備不足が招く後悔のパターン|ビザ・社会保障・語学の落とし穴
準備不足で起きやすい後悔のパターンは、主に3つです。
① ビザ要件の未確認:就労意図があるのに観光ビザで入国し、入国審査で弾かれる、あるいは現地で働けないまま滞在期間を消費する。ビザは移住計画の最初に確認すべき項目です。
② 社会保障の穴:日本の会社を辞めて海外移住すると、日本の社会保険(健康保険・厚生年金)が切れます。現地の社会保険に加入できない期間が生まれると、医療費が全額自己負担になります。
③ 語学の壁:「英語圏なら英語さえ話せれば仕事に困らない」というのは大きな誤解です。業務で使える英語力と、観光で使う英語力は別物です。現地採用を目指すなら、業務水準の語学力を移住前に身に付ける必要があります。
いずれも「行ってから考える」では手遅れになりやすい問題です。最初から出口(永住権ルート・ビザ要件・収入確保)まで設計してから移住に動くことが、後悔を減らす最短ルートです。
海外移住の費用の見落とし|生活費だけを計算していては足りない
「物価が安い国に移住して生活費を下げる」という発想は間違いではありませんが、計算に入れておくべき費用は生活費だけではありません。
見落とされやすい費用の例
① 日本側の維持コスト:住民票を残した場合の住民税・国民健康保険・国民年金など
② 渡航・引越し費用:国際引越しは数十万〜百万円を超えることもある
③ ビザ申請・更新費用:国によっては数万〜数十万円の申請費がかかる
④ 為替変動リスク:円安が進んでいる状況では、日本の口座から現地通貨に換えるたびに目減りする
⑤ 緊急帰国費用:本人や家族の疾患・事故への備え
「海外に出れば生活費が安くなる=楽になる」という計算は、上記を含めて検討しないと成立しません。費用を節約することよりも、現地でも自分で稼ぐ力を確保しておくことが、長期的な安心につながります。
海外移住の仕事、結局どう選ぶ?|「雇われる」以外の第4の選択肢

ここまで5つの働き方を比較してきました。そこで一つ問いを立てたいと思います。
「海外移住の目的は、海外の会社で働くことですか?」
多くの方が、最初は「No」と答えるはずです。海外移住の目的は、自分が望む場所で暮らし続けることのはずです。仕事はその手段の一つに過ぎない。にもかかわらず、転職・駐在・現地採用という選択肢ばかりを調べてしまうのは、「雇われる前提」で考えてしまっているからです。
起業ルートが合理的な3つの理由
3章の比較表を見ると、起業(個人事業主ビザルート)は複数の軸で他の方法にない特徴を持っています。
① ビザを自分で保有できる:雇用主に依存しないため、解雇されてもビザを失わない。住み続ける権利は自分のものです。
② 永住権への道が設計できる:オランダの日蘭条約ビザやポルトガルのD2ビザなど、個人事業主ビザから5年後に永住権申請ができるルートが存在します。最初から出口まで逆算できます。
③ 年齢も就職市場も関係ない:30代・40代・50代であっても、事業を持つことに年齢制限はありません。
私自身のBefore/After
私自身は、P&Gのマーケティング部門に籍を置いていました。世界的企業でのキャリア、安定した給与、海外赴任の機会。恵まれた環境だったと思います。しかしそこで実感したのは、「どこに住むか、いつ帰るか、次の赴任先はどこか」のすべてが会社の決定に委ねられているという現実です。
その後、培ったマーケティングのスキルを使って自分の事業を立ち上げ、イギリスを拠点に活動を始めました。最初から順調だったわけではありません。赤字の期間もありました。しかし、住む場所を自分で決められる。仕事の相手を自分で選べる。この感覚は、雇われていた期間には得られなかったものです。
ゆっくり積み上げることが前提
ここで大切なことをお伝えします。事業は、短期間で一気に立ち上げるものではありません。
「3ヶ月で月収○倍」「すぐに安定収入」という話には、根本的に無理があります。成長スピードを早めすぎると、ほぼ必ず壁にぶつかります。地道にスキルを積み上げ、少しずつ顧客を増やし、事業の土台を育てる。そのプロセスに要する時間こそが、長く続く事業の基盤になります。
私がお伝えしたいのは、急いで起業してすぐに移住するという話ではありません。今の仕事を続けながら、稼ぐ力の種を蒔き、芽が出始めたら移住を設計するという順序です。
受講生の実例
このルートを実際に歩んでいる方の事例を、体験談記事として公開しています。フランス・パリに移住した諸橋穂乃佳さん、スペイン・バルセロナでノマドビザを取得した椎原知世さん。それぞれの実例から、具体的なイメージをつかんでいただけると思います。
よくある質問(Q&A)

まとめ
海外移住の仕事について、5つの方法の比較から年代別戦略、後悔しないための準備まで整理してきました。
この記事の3点を最後にまとめます。
① 海外移住して働く方法は多様にある。転職・駐在・ワーホリ・フリーランス・起業という選択肢があり、それぞれに異なるメリット・デメリットがある。
② 年代・目的・ビザ要件を整理すると、個人事業主ビザルートはビザの自由度・永住権への接続・年齢不問という点で検討価値がある。
③ 事業を持つルートを選ぶにしても、短期間で一気に、ではなくゆっくり積み上げることが前提です。今すぐ転職しなくても、今からできる準備は必ずあります。
海外移住と仕事の問いに正解はひとつではありません。ただ、どこにいても稼げる力を先に持つという順序で設計することが、長く自由に生きるための地図になると私は思っています。
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