移住先が決まると、次に頭を悩ませるのが持ち物です。スーツケース2つに何を詰めるか、残りは送るのか、それとも向こうで買うのか。海外移住の持ち物リストを作ろうとしても、何から手をつければいいのか迷う方は多いと思います。私はスイスとイギリスで合わせて10年暮らしてきました。日本から何を持っていき、何を現地で揃えるかは、行き先の国や暮らし方によって変わります。
この記事では、持ち物の全体像、どの国でも共通のチェックリスト、手荷物・医薬品・食品の持ち込みルール、費用と送り方、そしてイギリス・スイス・オランダに移る場合の違いを、順番にお伝えします。チェックリストは記事の中に表で載せているので、そのまま出発前の確認に使ってください。
目次
本記事の航空会社の手荷物規定、医薬品や食品の持ち込みルール、各国の引越荷物の免税制度、電圧などの情報は、2026年9月時点のものです。こうした制度や規定は頻繁に変更されます。本記事は筆者個人の経験をもとにまとめたものですので、出発や申請の前に、必ず航空会社・税関・各国政府の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
1. 海外移住の持ち物リストは、まず全体像から考える

海外移住の持ち物に、全員に共通する正解はありません。持っていくべきものが人によって変わるのは、主に次の3つが違うからです。
① 移住先の国:電圧やプラグの形、税関のルール、日本の物が現地でどれだけ手に入るかが国ごとに異なります。
② 滞在の長さ:数年で戻るつもりなのか、永住まで見据えて暮らすのかで、日本から運ぶ価値のある物が変わります。
③ 暮らし方:食生活、家族構成、仕事で使う道具によって、何を優先するかが変わります。
ただ、どんな条件の人でも、持ち物の行き先は次の4つのどれかに振り分けられます。この全体像を先に持っておくと、リスト作りが楽になります。
| 行き先 | 向いている物 | 例 |
|---|---|---|
| 手荷物(機内に持ち込む) | 手元にないと困る物、預けられない物 | 貴重品・書類・薬・PC・モバイルバッテリー |
| 預け荷物 | 到着してすぐに使う物 | 当面の季節の衣類・日持ちする食品 |
| 別送(航空便・船便・引越業者) | 急がないが、日本から運びたい物 | 季節外の衣類・本・日本の家電 |
| 現地で揃える | 大きな物、現地でも同じ物が買える物 | 大型家具・一般的な家電・日用品 |
コツは、手荷物と現地で揃える物を先に決めることです。この2つが決まると、預け荷物と別送に回す量が見えてきます。量が見えれば、第4章で扱う費用の見当もつけやすくなります。
日本で買った物は、移住したあとに取り寄せる方法もあります(第4章で紹介します)。出発の時点ですべてを運び切ろうとしなくても大丈夫です。
荷物の減らし方や仕分けの基本は、海外移住の荷物と準備でよくある失敗にまとめています。
2. 海外移住の持ち物リスト:どの国でも共通の基本チェックリスト

どの国に移住する場合でも使える基本のチェックリストを、分類ごとに表にまとめます。海外引っ越しで持っていくものを決めるときの土台として使ってください。
| チェック | 分類 | 持ち物 | 運び方 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| □ | 貴重品・書類 | パスポート | 手荷物 | 残存期間を事前に確認 |
| □ | 貴重品・書類 | ビザ関連書類(原本とコピー) | 手荷物 | コピーは別のバッグにも |
| □ | 貴重品・書類 | 国際運転免許証 | 手荷物 | 現地で運転する予定がある場合 |
| □ | 貴重品・書類 | 戸籍謄本・卒業証明などの公文書 | 手荷物 | アポスティーユが必要かは提出先に確認 |
| □ | 貴重品・書類 | クレジットカード(複数枚) | 手荷物 | 使えなくなったときの予備 |
| □ | 貴重品・書類 | 日本の銀行・証券のログイン手段 | 手荷物 | 認証用のスマホや番号を確認 |
| □ | 医薬品 | 常備薬・処方薬 | 手荷物 | 英文の説明書類を添える |
| □ | 電子機器 | スマホ・PC・充電器 | 手荷物 | 仕事に使うものは必ず手元に |
| □ | 電子機器 | 変換プラグ・モバイルバッテリー | 手荷物 | モバイルバッテリーは預け入れ不可 |
| □ | 衣類 | 到着直後の季節の衣類 | 預け | 残りは別送でもよい |
| □ | キッチン・食品 | 日本の調理家電(使う場合) | 預けまたは別送 | 変圧器とセットで |
| □ | キッチン・食品 | 日持ちする日本食 | 預け | 移住先の食品ルールを確認 |
| □ | 仕事道具 | 機材・仕事の書類 | 手荷物または別送 | 事業に欠かせないものは手荷物 |
大切なのは、項目ごとに運び方を決めておくことです。特に、貴重品・書類・医薬品・モバイルバッテリーは手荷物で運ぶと覚えておいてください。預け荷物が遅れたり紛失したりしたとき、書類や薬が手元にないと、到着直後の手続きや体調管理に響くからです。
家電は、日本仕様のものを持っていかなくても、現地で買い揃えれば足りることが多いです。私の場合、日本の炊飯器は変圧器とセットでイギリスに持ってきました。持っていくときに気をつけたいのが電圧です。日本の家庭用電源は100Vですが、イギリス・スイス・オランダはいずれも230Vです。100V専用の家電をそのままつなぐと故障の原因になるので、変圧器が必要になります。変圧器は、使う家電の消費電力に見合った容量のものを、メーカーの仕様で確かめて選んでください。
国際運転免許証の取り方は国際運転免許証の取得方法で詳しくまとめています。公文書のアポスティーユ(外国で使うための外務省の証明)は、提出先から求められた場合に申請するものだと外務省が案内しています。必要かどうかを提出先に確認してから準備してください。
住民票や年金、健康保険などの手続きは、あえてこの表に入れていません。全体像は海外移住の準備完全チェックリストで順番に整理しています。
3. 海外移住の持ち物で2026年に確認したいルール:手荷物・医薬品・食品

ヨーロッパで暮らしてきた10年の間にも、手荷物や持ち込みのルールは何度も変わってきました。私は出発のたびに、航空会社や政府の公式の案内を見直すようにしています。
モバイルバッテリーの機内持ち込みルールの見直し
2026年4月24日から、機内に持ち込むモバイルバッテリーのルールが変わりました。機内に持ち込めるのは1人2個まで(160Wh以下に限る)で、機内ではモバイルバッテリー本体への充電も、モバイルバッテリーから他の電子機器への充電もできません。預け荷物に入れることも、引き続き禁止です。なお、JALは2027年1月以降、上限が100Whに引き下げられる可能性があると案内しています。最新の条件は国土交通省と航空会社の案内で確認してください。
預け荷物の重さと個数
預け荷物の重さや個数、サイズの上限は、航空会社や運賃の種類、座席のクラスによって異なります。たとえばJALの国際線エコノミークラスでは、無料で預けられるのは2個まで、1個あたり23kgまで、3辺の合計203cm以内です。ANAの国際線エコノミークラスは、1個あたり23kgまで、3辺の合計158cm以内で、個数は運賃規則によって0個から2個までと異なります。同じ航空会社でも条件が変わるので、自分の予約内容で確認してください。
医薬品の持ち出し
処方薬は、薬の名前や用途を英文で説明できる書類を添えておくと安心です。医療用麻薬にあたる薬を携帯して出国する場合は、出国日の2週間前までに、住所地を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部へ許可を申請する必要があります。この許可は、移住先の国に持ち込めることまでは保証しないので、移住先のルールも確認してください。詳細は麻薬取締部の案内で確認できます。
現金と食品の持ち込み
100万円相当額を超える現金などを持って出国する場合は、税関への申告が必要です。食品については、EU域外からEUへ肉や乳製品を持ち込むことは原則としてできません(粉ミルクや乳児食、医療上必要な特別食などは例外。欧州委員会の案内)。イギリスとスイスも、日本からの肉や乳製品は原則として持ち込めません。移住先ごとの食品ルールと引越荷物の免税制度は、第5章でまとめます。
4. 海外移住の持ち物にかかる費用と送り方

海外移住の持ち物にかかる費用は、荷物の量と送り方の組み合わせでほぼ決まります。送り方ごとに整理すると、次のとおりです。
| 送り方 | 費用の決まり方 | 向いている荷物 | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 手荷物 | 無料の範囲を超えると超過料金 | 貴重品・書類・当面の生活用品 | 航空会社 |
| 航空便の別送 | 重さや容積で決まる | 早めに必要な衣類や日用品 | 運送会社・引越業者 |
| 船便の別送 | 容積で決まり、届くまで日数がかかる | 急がない家財や本 | 運送会社・引越業者 |
| 海外引越業者のパック | 荷物量に応じた見積もり | 家具・家電を含むまとまった荷物 | 引越業者 |
| 転送サービス | 保管と転送の回数・重さ | 移住後に日本で買った物 | 各サービス |
どの送り方も、量が増えるほど費用は上がります。第1章のとおり手荷物と現地で揃える物を先に決めておくと、別送に回す量がはっきりして、見積もりも比べやすくなります。具体的な相場の金額は、海外移住の引っ越し費用と船便・空輸の選び方で詳しくまとめています。ここからは、私が実際に使っている方法を2つご紹介します。
日本で買った物は転送サービスで取り寄せる
私はBaggage Forwardという日本の転送サービスを長く使っています。日本のネット通販で買った物や郵便物を倉庫で預かり、まとめて海外に送ってくれるサービスで、公式サイトによると最大2か月まで無料で保管できます。梱包がとても丁寧で、日本からの便は開けるのがいつも楽しみです。
一方で、ロンドンには日本食や惣菜のデリバリーもあり、日本から取り寄せる量は以前より減りました。移住先で日本の物がどこまで手に入るかを先に調べておくと、荷物も費用も絞り込めます。
転送サービス全般の使い方は、海外在住者向け転送サービスの使い方でも紹介しています。
海外での引っ越しも日本の業者に頼める
イギリス国内で引っ越すときも、私は日本の引っ越し業者のサカイにお願いしています。日本語でやり取りできる業者を選べると、慣れない土地での引っ越しの負担が軽くなります。
5. 海外移住の持ち物:イギリス・スイス・オランダの場合

第2章の共通チェックリストに、移住先ごとの項目を足して使ってください。取り上げるのは、私が暮らしてきたイギリスとスイス、そして移住先として私が相談を受けることの多いオランダの3か国です。
まず、3か国の引越荷物の免税制度の主な条件を比べておきます。
| 国 | 移住前の条件 | 持ち込む物の条件 | 期限 | 申告の方法 |
|---|---|---|---|---|
| イギリス | 12か月以上続けて国外に居住 | 6か月以上所有・使用した私物 | 移住後12か月以内 | 発送前にToR1で申請 |
| スイス | 国外からスイスへ住まいを移す | 国外で6か月以上使用した物 | 移住後2年以内 | 様式18.44に品目リストを添えて税関へ |
| オランダ | 12か月以上続けてEU域外に居住 | 6か月以上所有・使用した物 | 移住後12か月以内 | 引越業者や運送会社が申告 |
イギリスに移住する場合
イギリスは、私が今暮らしている国です。
| チェック | 追加で確認したいこと | メモ |
|---|---|---|
| □ | 変圧器 | 日本の家電を使うなら必須 |
| □ | 転送サービスの登録 | 出国前に済ませておく |
| □ | 引越荷物の免税申請(ToR1) | 荷物を発送する前に申請 |
イギリスの引越荷物の免税制度は、Transfer of Residence relief(ToR)と呼ばれます。条件は上の比較表のとおりで、免税を受けた物は移住から12か月間、貸したり譲ったりできません。荷物を発送する前にToR1フォームで申請して参照番号を取り、引越業者に伝えます。詳しくはgov.ukのToR1申請ページと制度の解説ページで確認してください。
食品はEUとは別のルールですが、日本などEU域外からの肉や肉製品、乳製品は持ち込めません(例外はgov.ukの食品持ち込みのページで確認できます)。電源は230V、プラグは3本の角ピンのBFタイプ(国際的な呼び方ではタイプG)です。移住全体の流れはイギリス移住の完全ガイドでまとめています。
スイスに移住する場合
| チェック | 追加で確認したいこと | メモ |
|---|---|---|
| □ | 様式18.44と引越荷物の品目リスト | EU・EFTA以外からは滞在許可の書類も必要 |
| □ | 変圧器 | 日本の家電を使う場合 |
スイスでは、引越荷物(Übersiedlungsgut)を様式18.44に品目リストを添えて入国地の税関に申告すれば、免税で輸入できます。国外で6か月以上使ってきた物を、スイスでも引き続き使うことが条件です。荷物は住まいを移してから2年以内に輸入し、EU・EFTA以外の国から移る場合は、スイスの滞在許可の書類も必要です。詳しくはスイス連邦関税・国境警備庁(BAZG)の公式ページと様式18.44で確認してください。
食品もEUとは別のルールで、日本などからの動物由来の食品は原則として持ち込めません(BAZGの案内)。電源は230V、プラグはJタイプで、Cタイプのプラグも差し込めます。
私がスイスに住んでいた頃は、日曜日は掃除機や洗濯機を使わないという近隣とのルールがありました。家電を持っていくなら、使ってよい時間帯についても、住む地域の決まりを確認しておくと安心です。
オランダに移住する場合
オランダは、私がこれまでサポートしてきた方々の移住先として、選ばれることが多いと感じる国です。
| チェック | 追加で確認したいこと | メモ |
|---|---|---|
| □ | 住民登録などの手続きに使う書類の原本 | 手荷物で運ぶ |
| □ | 引越荷物の品目リスト(署名済み) | 免税輸入の申告に使う |
| □ | 変換プラグ | コンセントの形を出発前に確認 |
EU域外から移る場合、引越荷物(verhuisgoederen)は上の比較表の条件を満たせば免税で輸入できます。免税を受けた物は、輸入から12か月間、貸したり譲ったりできません。申告は引越業者や運送会社が税関に行うため、署名した品目リストと、自治体への住民登録の証明(まだ無い場合は、転出の証明に加えて雇用契約書や賃貸契約書など)を業者に渡します。詳しくはオランダ税関の案内で確認してください。
食品はEU共通のルールで、日本からの肉や乳製品は原則として持ち込めません。電源は230Vです。コンセントの形は日本と同じとは限らないので、変換プラグは出発前に確認して用意しておくと安心です。移住全体の流れはオランダ移住の完全ガイドをご覧ください。
スペインやポルトガルなど、その他のEU加盟国に移る場合も、食品はEU共通のルールを、引越荷物の免税制度は各国の税関の案内を確認してください。
6. 海外移住の持ち物より先に整えておきたい、長く暮らすための土台

持ち物をどれだけ丁寧に揃えても、ビザが続かなければ、荷物ごと日本に帰ることになります。持ち物リストを作るのと同じくらい、その国で暮らし続けられる土台を考えておくことが大切です。
スイスには会社の赴任で住んでいました。赴任では、どの国に、いつまで住むのかを会社が決めます。会社で働いている限り、住む国を自分で選ぶことはできない。その構造に気づいたことが、のちにイギリスで自分の事業を始めるきっかけになりました。今はその事業が、この国で暮らし続けるための土台になっています。
だからこそ、持ち物と同じくらい大切にしてほしいのが、自分で稼ぐ力を持つことです。それは短期間で一気に手に入るものではなく、日本にいるうちから自分の事業を少しずつ、地道に積み上げていくものです。その積み重ねが、移住先で長く暮らしていくための支えになります。ビザと事業を準備する順番は海外移住の準備完全チェックリストで、移住資金の考え方は海外移住の資金はいくら必要かで詳しくまとめています。
誰かの決断で住む国が決まる暮らしより、自分で選んだ国で、自分の手で毎日を続けていく暮らしのほうが、ずっと楽しいと私は思っています。
7. 海外移住の持ち物についてよくある質問(Q&A)

最後に、海外移住の持ち物の要点を3つに整理します。
① 持ち物は「手荷物・預け荷物・別送・現地で揃える」の4つに振り分けて考える。
② 共通のチェックリストに移住先の項目を足して抜け漏れを防ぎ、最終確認は航空会社や税関の一次情報で行う。
③ 費用は、荷物の量と送り方の組み合わせで決まる。
出発前の最終確認には、この記事のチェックリストをそのまま使ってください。そして、荷物と同じくらい大切なのが、移住先で長く暮らしていくための自分の事業です。私がヨーロッパで開催した勉強会の特別講義でも、事業を作りながら移住する具体的な方法をお伝えしています。
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