海外に住みながら事業を営みたい。でも、何を誰に売ればいいのか。個人で始められるビジネスモデルにはどんな選択肢があるのか。海外移住と起業を同時に考えたとき、この問いに最初にぶつかる人は多いのではないでしょうか。
この記事では、BtoBの基本的な意味からBtoCとの違い、そして海外移住を見据えた個人事業主がBtoBという仕組みをどう活かせるかまで踏み込んで解説します。私はイギリスを拠点に、法人向けのマーケティング支援や事業コンサルティングを日本の法人に提供しています。国境を越えて事業を回してきた経験から見えた、BtoBという仕組みの本質をお伝えします。
目次
※免責事項
本記事の統計・制度に関する情報は2026年7月時点のものです。最新の数値は各出典元をご確認ください。
1. BtoBとは?意味と基本の定義

BtoBの正式名称と意味
BtoBとは「Business to Business」の略で、企業(法人)が企業(法人)を相手に商品やサービスを提供する取引形態のことです。日本語では「企業間取引」と訳されます。「to」の部分は数字の「2」に置き換えて「B2B」と表記されることもあり、どちらも同じ意味で使われます。
普段の生活の中で、私たち消費者がBtoB取引を直接目にする機会はあまりありません。スーパーで買う商品も、使っているスマートフォンも、最終的に手元に届くまでには、メーカーと部品供給企業、卸売業者と小売業者といった、無数のBtoB取引が積み重なっています。
その規模は想像以上です。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」(2024年公表・2023年実績)によると、日本国内のBtoB-EC(電子商取引)市場規模は約465兆円にのぼります。同じ調査でのBtoC-EC市場規模は約24兆円ですから、BtoBの市場規模はBtoCの約19倍という計算になります。EC化率もBtoBは約40%に達しており、企業間のデジタル取引が急速に拡大していることが分かります。BtoBは、私たちの目に触れにくいだけで、経済を動かす主エンジンだと言えます。
BtoBビジネスの代表的な業界と企業例
BtoBビジネスがどのような業界で展開されているか、代表的な例を整理します。
- メーカー(部品・素材):自動車のエンジン部品、半導体など、完成品メーカーに部品や素材を供給する企業群。
- ITサービス・SaaS:業務用ソフトウェア、クラウドサービス、システム開発。Microsoft 365やSalesforceのような法人向けサービスが代表例です。
- コンサルティング・士業:経営コンサルティング、税理士・会計士、法律事務所など、法人の課題解決を専門とするサービス。
- 広告代理店・マーケティング支援:法人のマーケティング戦略立案、広告運用代行。
- 人材サービス:採用支援、人材派遣、研修。
こうして並べてみると、BtoB企業は消費者の目に触れにくい一方で、社会のインフラを実質的に支えていることが分かります。そして注目すべきは、コンサルティング、マーケティング支援、ITサービスといった分野は、オンラインで完結しやすいという共通点を持っていることです。つまり、海外に住んでいても提供できるBtoBサービスは、想像以上に多いのです。
2. BtoBとBtoCの違い

取引相手・意思決定・購買プロセスの違い
BtoBとBtoCは、同じ「ビジネス」でも仕組みそのものが大きく異なります。主な違いを5つの軸で整理しました。
| 比較軸 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| 取引相手 | 法人 | 個人消費者 |
| 意思決定者 | 複数人・組織的(担当者→上長→決裁者の稟議) | 個人の判断で完結することが多い |
| 購買プロセスの長さ | 数週間〜数ヶ月(比較検討・見積もり・稟議) | 即断即決のケースが多い |
| 取引単価 | 高い傾向(数十万〜数千万、場合によっては億単位) | 低いが購入頻度は高い |
| 関係性の継続性 | 一度始まると長期契約・リピートになりやすい | 継続もあるが乗り換えも起こりやすい |
こうして比較すると、BtoBは「1件の取引が大きく、関係が長く続く」、BtoCは「顧客数で勝負する」というビジネス構造の違いが見えてきます。海外に住みながら事業を営む場合、大量集客が難しい環境で高単価・長期契約を狙えるBtoBの構造は、大きなアドバンテージになります。この対比は、後の章で触れる「海外移住を見据えた個人事業主がどちらを選ぶか」という問いの土台になります。
BtoB以外の取引形態(CtoC・DtoC・BtoBtoC)
BtoB・BtoC以外にも、取引形態を表す言葉がいくつかあります。簡単に整理しておきます。
- CtoC(Consumer to Consumer):メルカリやヤフオクのような、個人間で行われる取引。
- DtoC(Direct to Consumer):メーカーが中間業者を介さず、消費者に直接販売するモデル。自社ECサイトでの直販が代表例です。
- BtoBtoC:ある企業が別の企業を通じて、最終的に消費者にサービスを届けるモデル。ECモールの出店者が典型例で、モール運営者と出店者の関係がBtoB、出店者と消費者の関係がBtoCにあたります。
この記事の主役はあくまでBtoBとBtoCの違いですので、それぞれの詳細には深入りせず、次章から個人事業主の視点に移っていきます。
3. 個人事業主にとってのBtoBという選択肢

ここまでBtoBを「企業対企業の取引」として説明してきましたが、この仕組みは大企業だけのものではありません。海外で個人事業を営む人にとっても、「顧客が法人か個人か」というBtoB・BtoCの選択は、事業設計の核心に関わる問いです。
個人事業主がBtoBビジネスを選ぶメリット
個人事業主がBtoBビジネスを選ぶことには、具体的なメリットがあります。
- 単価が高い:法人向けのコンサルティング、研修、マーケティング支援は、1件あたりの単価が個人向けの数倍になることも珍しくありません。海外在住で大量集客が難しい環境では、少数の法人から高単価で継続的に依頼される形の方が、事業の基盤が安定します。
- 継続契約になりやすい:法人は一度信頼関係を築くと、長期で継続する傾向があります。海外にいながら毎月新規の集客に追われ続ける構造から抜け出しやすくなります。
- 実績が実績を呼ぶ:法人との取引実績は、次の法人クライアントを獲得する際の強力な信用材料になります。「海外在住だから不安」という壁も、法人の導入事例があれば乗り越えやすくなります。
- 場所を問わない:法人向けのコンサルティングやマーケティング支援は、Zoomやメールで完結するものが大半です。住んでいる国が変わっても、サービス提供に支障が出にくい。これは海外移住と事業の両立を考える上で決定的なメリットです。
一方で、正直に触れておくべきデメリットもあります。営業サイクルが長く、信用構築に時間がかかること。そして、取引先の予算削減や方針転換に巻き込まれるリスクがあることです。良い面だけでなく、こうした現実も理解した上でBtoBという選択肢を検討する必要があります。
コンサル・コーチング・講座ビジネスにおけるBtoBとBtoCの境界
ここが、多くの人が見落としている視点です。同じ「コーチング」という専門性でも、個人向け(キャリアコーチング、ライフコーチングなど)はBtoC、法人向け(エグゼクティブコーチング、組織開発支援など)はBtoBに分類されます。同じ「マーケティング支援」でも、個人起業家向けのコンサルティングはBtoC、法人のマーケティング戦略コンサルティングはBtoBです。
つまり、持っているスキルは同じでも、「誰を顧客にするか」によってBtoBにもBtoCにもなるということです。この「顧客を自分で選ぶ」という発想自体が、雇われる立場では持ちにくい視点です。「就職先としてBtoB企業を選ぶ」のではなく、「起業家として、顧客が法人か個人かを自分で選ぶ」。海外移住を考えるなら、なおさらこの視座の転換が重要です。住む国を自分で選ぶように、事業の形も自分で選ぶ。それが、場所に縛られない働き方を設計するということの本質だと私は考えています。
4. BtoB型ビジネスを個人で組み立てるための考え方

まず「誰の課題を解決するか」から始める
BtoB型ビジネスを個人で組み立てる際の出発点は、「誰の、どんな課題を解決するか」です。BtoCのように広く薄く集客するモデルとは違い、BtoBの本質は「特定の法人が抱える明確な課題に対して、自分の専門性で解決策を提供する」ことにあります。
海外に住んでいると、日本の法人と物理的に会う機会は限られます。だからこそ、オンラインのやり取りの中で課題を見抜き、戦略を提示し、結果を出せる存在であろうとすることが重要です。私自身、イギリスから日本の法人にサービスを提供する中で、単なる代理店として動くのではなく、自分の頭で考え、提案する立場であり続けることを大切にしています。
また、BtoBでは信頼関係がすべてと言っても過言ではありません。海外在住という条件は、最初の信頼構築にはハードルになることもあります。ですが、一度良いクライアントに出会えたら、その関係を深めることに全力を注ぐこと。距離を超えた信頼は、一度築けば物理的な距離よりもずっと強固です。
BtoBで先に種銭を作り、BtoCに広げるという設計
私自身の事業も、まずBtoB(スキルを法人に提供する形)でできる限りの基盤を作り、そこで得た種銭をもとにBtoCへ展開するという順番で進めてきました。
海外で個人が事業を立ち上げるとき、最初からBtoCで「広く薄く集める」モデルを選ぶと、集客コストと手間に追われやすくなります。まずBtoB型で法人向けに高単価のサービスを提供し、事業の基盤を作る。そこで得た資金と実績を種銭にして、BtoCに展開していく。この順番が、海外移住と事業の両立を目指す個人事業主にとっては堅実な設計になります。
ただし、これは短期間で一気に事業を拡大させることを勧めているわけではありません。むしろ逆です。成長のスピードを急ぎすぎると、事業は簡単に崩れます。目の前の法人クライアント一社一社に丁寧に価値を提供し、地道に信頼と実績を積み上げていく。急成長を狙うのではなく、ゆっくり積み上げること。これが、BtoBを土台にした事業づくりでもっとも大切な考え方だと私は感じています。
5. 海外移住とBtoB型ビジネスの相性

場所を選ばないBtoBビジネスの強み
BtoB型ビジネスの大きな特徴のひとつが、「場所を選ばない」ことです。法人向けのコンサルティング、マーケティング支援、研修、コーチングといったサービスは、オンラインで完結できるものが多くあります。つまり、自分がどこに住んでいても、日本や世界中の法人を顧客にすることができます。
これは「住む場所を自分で選ぶ自由」に直結します。会社員のまま海外に住もうとすると、海外赴任か現地就職しかありません。どちらも配属先や雇用主が住む場所を実質的に決める立場にあり、契約が終われば帰国を余儀なくされることもあります。一方、自分のBtoB型事業を持っていれば、住む国を自分で選び、変えることもできます。BtoB型ビジネスと海外移住の相性が良い理由は、まさにここにあります。
海外拠点から法人向けサービスを提供するという選択肢
実際に、海外を拠点にしながら日本の法人向けにマーケティング支援やコンサルティングを提供している個人事業主は存在します。ヨーロッパの個人事業主ビザ(オランダの日蘭条約に基づくビザ、ポルトガルのD7・D2ビザなど)を活用すれば、現地で合法的に事業を営みながら、日本や世界の法人を顧客にすることも可能です。最初から永住権までのルートを設計した上で移住すれば、ビザ切れの不安に振り回されず、事業に集中しやすくなります。
ただし、海外から法人向けサービスを提供する場合、会社設立が必要になるケースもあります。法人設立の具体的な方法や各国の制度については、事前に専門家へ相談しておくことをおすすめします。
なお、国を選ぶ際に大切にしたいのは、税金や物価の安さだけで判断しないことです。心が喜ぶ国で、自分の事業を営むこと。それが、長く続けられる海外移住とBtoB型ビジネスの土台になると私は考えています。
※ビザ・税制に関する情報は制度改定により変更される場合があります。最新・正確な要件は各国政府の公式サイトや専門家にご確認ください。参考:外務省 海外在留邦人数調査統計
6. BtoBについてよくある質問(Q&A)

まとめ
ここまでの内容を3つに整理します。
BtoBは企業間取引の仕組みであり、日本のBtoB-EC市場は約465兆円と経済の主エンジンです。取引単価・意思決定プロセス・関係性の継続性という点で、BtoCとは根本的に異なる構造を持っています。
そしてBtoBは、大企業だけのものではありません。個人事業主やフリーランスも、自分の専門性を法人向けに提供するBtoB型ビジネスを選ぶことができます。単価・安定性・実績の蓄積という面で、個人にとっても大きなメリットがあります。
さらに、BtoB型ビジネスは場所を選びません。海外に住みながら日本や世界の法人を顧客にすることも可能であり、それは「住む場所を自分で選ぶ自由」の土台にもなります。
BtoBという仕組みを知ることは、自分の事業の選択肢を広げることでもあります。どんな相手に、どんな価値を届けるか。その問いに向き合うことが、事業設計の第一歩です。2026年現在、この選択肢は個人にとって、以前よりずっと現実的なものになっています。
海外移住を「いつか」で終わらせないために。
ヨーロッパで開催した勉強会の特別講義を、公式LINEで公開しています。
180分超の特別講義・動画集・ロードマップ資料で
海外で継続的に収益を作る方法
後悔しない移住先の選び方
ビザ戦略
を解説しています。
海外移住や場所に縛られない生き方を実現したい方は、
公式LINEから無料で受け取ってください。











