移住準備

アメリカ移住の完全ガイド|グリーンカードの取り方とビザ・費用

世界最大の経済大国、アメリカ。自由の象徴として、いつの時代も日本人の移住先として根強い人気があります。ハリウッド、ニューヨークの摩天楼、シリコンバレーのビジネスチャンス。憧れを抱く人は少なくありません。しかし実際に永住を目指すとなると、ビザと永住権の壁は想像以上に高いのが現実です。

この記事では、アメリカ移住の基本情報から、ビザとグリーンカードの種類、取得方法、費用の実数、そして起業経由での移住設計まで、一次情報をもとに整理してお伝えします。私自身はヨーロッパを拠点に複数国で事業を展開しながら移住支援をしており、受講生の中にはアメリカにE2ビザで移住し、現地で事業を営んでいる方もいます。先にお伝えしておくと、アメリカには個人事業主として滞在できるビザや、ワーキングホリデー制度は存在しません。この前提を知らずに移住を検討し始める方が非常に多いため、まずはそこから正確に押さえていきましょう。

※免責事項(YMYL)
本記事はビザ・永住権・税制に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の移住・在留資格を保証するものではありません。最新・正確な要件はUSCIS国務省等の公式情報、または専門家(移住コンサルタント・移民弁護士等)に必ずご確認ください。

アメリカ移住の基本情報|在留邦人数・人気都市・生活環境

ニューヨークの街並みをストリートレベルから撮影

アメリカ移住を検討するうえで、まず押さえておきたいのが在留邦人数の実態です。外務省の海外在留邦人数調査統計(令和7年版)によると、アメリカに在留する日本人はおよそ42万人。世界の在留邦人数の中でも最多の国となっています。ただし、この数字には駐在員やその家族、留学生といった長期滞在者も多く含まれており、永住者だけの数字ではありません。「在留邦人数が多い=移住しやすい」わけではない、という点はこの段階で押さえておいてください。

人気の移住先都市としては、ロサンゼルス、ニューヨーク、ホノルル、サンフランシスコ、シアトルなどが挙げられます。Numbeoの生活費データによると、アメリカ全体の1ベッドルーム賃貸(都心部)の平均家賃は月額1,642ドル前後、郊外でも1,338ドル前後と、都市によって大きな差があります。治安面では、外務省海外安全ホームページのデータをもとに見ると、ニューヨークは銃規制が比較的厳しい一方、ロサンゼルスは車上荒らしの発生率が高いなど、都市ごとの傾向がまったく異なります。

さらにアメリカ特有の構造として、州によって税制・最低賃金・生活コストが大きく異なる点も見逃せません。同じアメリカ国内でも「どの州、どの都市を選ぶか」で暮らしの前提が変わってきます。

多様な文化とビジネスチャンスの大きさに惹かれる気持ちは、私自身もよく分かります。ただ、住みたいという気持ちだけでは移住は設計できません。大切なのは、その国で自分がどう生きていくかという戦略を持つことです。次の章では、アメリカ移住を実現するために避けて通れないビザと永住権の仕組みを見ていきます。

アメリカ移住のビザ・永住権の種類|非移民ビザ・移民ビザ・E2ビザ

スタンプが押されたパスポートのイメージ

アメリカ移住の設計を始める前に、まず理解しておくべきことがあります。アメリカのビザは大きく「非移民ビザ(一時滞在向け)」と「移民ビザ(永住権=グリーンカードにつながるもの)」の二本柱で構成されています。そして日本人にはワーキングホリデー制度がなく、個人事業主として滞在できるビザも存在しません。この前提を踏まえたうえで、アメリカ移住のビザ全体像を整理していきます。

非移民ビザ|H-1B・L-1・E2投資ビザの違い

代表的な非移民ビザとして、まずH-1B(専門職就労ビザ)があります。年間の発給上限は6万5,000件(修士号以上保有者向けの追加枠2万件を除く)で、応募が上限を超えた場合は抽選となり、近年は取得が年々難しくなっています。L-1ビザは企業内転勤者向けで、同じ企業の海外拠点から米国拠点へ異動する場合に使えるものであり、個人が単独で申請することはできません。E-2ビザは日米通商航海条約に基づく投資ビザで、実質的な起業ルートとして機能します。詳しくは6章で改めて解説します。ほかにO-1ビザ(卓越した能力を証明できる人向け)もありますが、証明のハードルは高めです。

H-1Bのように雇用主のスポンサーが前提となるビザには、構造的なリスクもあります。ビザが会社に紐づいているため、解雇されればビザの効力も同時に失われる可能性があるという点です。会社にビザを握られる形の移住には、こうしたリスクがあることも知っておいてください。

移民ビザ|グリーンカードとは何か

移民ビザは、いわゆるグリーンカード(永住権)につながるビザです。グリーンカードを取得すると、期限なく米国内で就労・居住することができます。ただし、これは米国市民権とは別の制度で、市民権を得るにはさらに別の帰化手続きが必要になります。グリーンカードの具体的な取得方法については、次の3章で詳しく解説します。

個人事業主ビザは存在しない|E2投資ビザが唯一の起業ルート

ここがアメリカ移住を考えるうえで最も重要なポイントです。フリーランスとして、自分の事業だけを理由にアメリカに滞在できるビザは存在しません。これは、オランダ(日蘭条約に基づく個人事業主ビザ)フランスなど、個人事業主向けの滞在許可を持つヨーロッパ諸国と比べると、アメリカの制度上の大きな違いです。

アメリカで唯一の起業型ルートがE-2投資ビザですが、相応の投資額と具体的な事業計画が求められます。ビザの選択肢が限られているからこそ、渡米前から「稼ぐ力」を先に持っておく設計が重要になります。この視点については、6章で改めて深掘りします。

グリーンカードの取得方法|アメリカ移住で永住権を得る4つのパターン

ビザ申請書類に記入する女性の手元

グリーンカード(永住権)を得る方法は、主に4つあります。いずれの方法も、自分の意思だけでは完結しない仕組みになっている点が、アメリカ移住の出発点として理解しておくべきポイントです。

雇用ベース(EB-1・EB-2・EB-3)|最も一般的なルート

雇用ベースの移民ビザは、最も一般的なグリーンカード取得ルートです。EB-1は卓越した能力を持つ研究者や経営者などが対象、EB-2は国益免除(NIW)または修士号以上と雇用主のスポンサーが必要、EB-3は学士号以上と雇用主のスポンサーが条件になります。いずれのカテゴリでも、雇用主のスポンサーか、極めて高い専門性の証明が前提です。特にEB-2・EB-3ではPERM(労働認定)というプロセスを経る必要があり、審査には数年単位の時間がかかることも珍しくありません。

DV抽選(グリーンカード抽選プログラム)|低コストだが確率1%未満

DV抽選プログラム(Diversity Visa Lottery)は、年間で最大およそ5万5,000件のビザが発給される制度です。日本国籍者にも応募資格があり、費用がほぼかからず、学歴や職歴の高いハードルもない、数少ない低コストルートです。ただし当選確率は1%未満とされており、毎年秋(10月頃)にある応募期間を逃さないことが前提です。運任せの要素が大きいため、移住設計の軸には据えられません。

家族ベース|配偶者・親・子の関係によるルート

米国市民または永住者の配偶者、親、子である場合に対象となる家族ベースの移民ビザです。自分の意思だけで選べるルートではないため、ここでは簡潔な紹介にとどめます。

EB-5(投資移民)|80万〜105万ドル規模の投資が必要

EB-5は投資額に応じて永住権を取得できる制度で、対象地域によって最低80万ドル、それ以外の地域では最低105万ドルの投資に加え、10名分の雇用創出が求められます。相応の資金力が必要なため、一般的な会社員にとってはハードルが極めて高いルートです。

どのルートも、自分ひとりの努力だけでは完結しません。だからこそ、移住を考え始めた段階でどのルートを目指すのかを決め、逆算して準備を進める視点が欠かせません。

※グリーンカードの取得条件・審査基準は変更されることがあります。最新情報はUSCIS公式サイトでご確認ください。

アメリカ移住にかかる費用|渡航費・ビザ申請費・都市別生活費

電卓とペンが置かれたデスクの費用計算イメージ

アメリカ移住には、初期費用と月々の生活費、両方を見ておく必要があります。

初期費用(目安・1USD=157.6円で計算)

項目 費用目安
H-1B(雇用主負担分・従業員25人以下) 約2,225ドル(約35万円)
H-1B(雇用主負担分・26人以上) 約3,595ドル(約57万円)
E-2ビザ 査証申請手数料 315ドル(約5万円)
移民弁護士費用 3,000〜1万ドル(約47万〜158万円)

USCISの公式手数料によると、H-1Bは雇用主側の基本申請料が460ドル(従業員25人以下)または780ドル(26人以上)、これに登録料215ドル、不正防止費500ドル、企業規模に応じた訓練費750〜1,500ドル、Asylum Program Fee 300〜600ドルが加算され、雇用主負担分だけで約2,225〜3,595ドル程度になります。E-2ビザの査証申請手数料は315ドルが目安です(いずれも変更の可能性があるため、申請前に必ず公式サイトで最新の金額を確認してください)。これに加えて、航空券代、住居のデポジット(家賃1〜2ヶ月分)、保険加入費、生活の立ち上げ費用がかかります。移民弁護士に依頼する場合は、3,000〜1万ドル程度が一般的なレンジとされています。

月額生活費(都市別の目安)

都市 単身者の月額生活費目安
ニューヨーク 4,000〜6,000ドル(約63万〜94万円)
ロサンゼルス 3,500〜5,000ドル(約55万〜79万円)
ホノルル 3,500〜4,500ドル(約55万〜71万円)
シカゴ 3,000〜4,000ドル(約47万〜63万円)

各種生活費データを参考にすると、単身者の月額生活費の目安は上表のとおりです。2026年8月時点のレート(1ドル=157.6円)で換算すると、ニューヨークの場合は月63万〜94万円ほどになります。アメリカの生活費の中で最も大きな割合を占めるのは家賃で、特にニューヨークやサンフランシスコではこの傾向が顕著です。雇用主が提供する保険がない場合、健康保険は個人加入で月300〜600ドル程度が一般的な目安とされています。

費用の問題は、結局のところ現地でどう事業を営むかとセットで考えなければ解決しません。貯金を切り崩すだけの移住には、いずれ終わりが来ます。

アメリカ移住のメリット・デメリット

サンフランシスコの街並みと橋のある風景

アメリカ移住のメリットとデメリットを、それぞれ整理します。

メリット

① 世界最大のマーケット:事業機会の規模が圧倒的に大きい
② 英語圏で情報量が多い:ビジネス・生活の両面で得られる情報が豊富
③ 多様な文化と価値観に触れられる環境
④ 高い給与水準:特にテック・金融業界で顕著
⑤ 教育機関の選択肢の広さ:大学から専門教育まで幅広い
⑥ 失敗に寛容な起業文化が根づいている

デメリット

① 永住権(グリーンカード)のハードルが極めて高い
② ワーキングホリデー制度がなく、とりあえず行くという選択ができない
③ 医療費が世界最高水準:保険がなければ救急受診1回で数千ドルかかることもある
④ 銃社会・治安の地域差が激しい
⑤ 個人事業主ビザが存在せず、起業にもE-2などの投資ビザが必要になる

制度のハードルを知らずに飛び込むと、数年後に行き詰まってしまいます。移住の前に、何で生きていくのかを先に設計しておくことが重要です。税率だけで移住先を選ぶと、本質を見誤ります。メリット・デメリットの比較だけでなく、自分がその国で本当に心豊かに暮らせるかを考えることが大切です。

起業経由でアメリカ移住を設計する視点|E2ビザと「稼ぐ力」

カフェでノートパソコンに向かう女性の手元

ここまで見てきたとおり、アメリカには個人事業主ビザがなく、グリーンカードも簡単には取得できません。ではアメリカ移住は不可能なのでしょうか。結論から言えば、起業経由のルートがあります。それがE-2ビザ(投資ビザ)です。

E-2ビザは、日米通商航海条約に基づき、米国内で事業を設立・運営するために発行されるビザです。法律で定められた最低投資額はありませんが、実務上は事業規模に応じておよそ10万〜20万ドル程度が目安とされています。ビザの有効期間は日本国籍者の場合最長5年で、更新も可能です。ただし、ビザの有効期間と1回の入国で認められる滞在期間(最長2年)は別の概念です。5年間そのまま滞在できるわけではなく、滞在を続けるには延長手続きが必要になります。また、E-2ビザはそのまま永住権につながるわけではなく、グリーンカードを目指す場合はEB-1やEB-2など別のカテゴリへの切り替えが必要になる点は押さえておいてください。

実際に、私の受講生の中にも、日本で事業を立ち上げて収益基盤を作ってからE-2ビザでアメリカに渡り、現地で事業を展開している方がいます。詳しい歩みはアメリカ移住を起業で実現した受講生の体験談で紹介していますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

会社にビザを握られる移住ではなく、自分の事業で渡る。これができれば、自分の足で立つ移住を設計できます。ただし、これは短期間で一気に成果を出すことを狙う道ではありません。まず日本にいるうちにマーケティングのスキルを磨き、オンラインで事業を立ち上げ、地道に実績を積み上げる。その先に、E-2ビザという選択肢が見えてきます。

どこにいても稼げる力を先に持つこと。その力があれば、アメリカに限らず、自分の心が喜ぶ国で生きるという選択肢が広がります。

アメリカ移住に関するよくある質問(Q&A)+まとめ

空港の出発ゲートから見える飛行機

Q1.アメリカ移住に貯金はいくら必要ですか?

初期費用(ビザ申請費・渡航費・住居デポジット等)に加え、3〜6ヶ月分の生活費を見ておくと安心です。都市によって必要額は大きく変わります。貯金額そのものより、現地で稼げる事業を持っているかどうかが本質です。

Q2.アメリカ移住に英語力はどのくらい必要ですか?

ビザ申請自体に語学要件が定められているわけではありませんが、生活や事業運営の場面では日常会話以上の英語力が求められます。語学力を先に完璧にすることより、稼ぐ手段を持っているかどうかが分かれ目です。

Q3.日本からアメリカに移住する最も簡単な方法はありますか?

簡単な方法はありません。DV抽選は低コストですが当選確率は1%未満です。現実的な選択肢は雇用ベースのビザかE-2ビザで、いずれも計画的な準備が必要になります。

Q4.アメリカにワーキングホリデー制度はありますか?

ありません。日本とアメリカの間にワーキングホリデー協定は存在しません。近い制度としてJ-1ビザがありますが、Internカテゴリで最長12ヶ月、Traineeカテゴリで最長18ヶ月と期間が限定されており、永住権にはつながりません。

Q5.家族でアメリカ移住はできますか?

ビザの種別によって、帯同家族向けのビザが用意されています。E-2ビザの場合、配偶者は帯同ビザで就労許可を取得できます。詳細はUSCIS公式サイトでご確認ください。

まとめ

アメリカは世界最大のマーケットであり、移住先として大きな魅力を持つ国です。しかし永住権のハードルは、先進国の中でも最高水準にあります。だからこそ、行ってから考えるのではなく、移住を考え始めた段階から逆算して設計する視点が必要です。ビザに依存せず、どこにいても稼げる力を先に持つことが、移住を夢で終わらせない方法です。

稼ぐ手段を先に決めることが、アメリカ移住を現実にする一番の近道になります。

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